バルサはなぜ大敗したのか?「メッシ依存」脱却の失敗とクーマンのダブルボランチの功罪。
バルセロナが、安定しない。
バルセロナはチャンピオンズリーグ・グループステージ最終節でユヴェントスと対戦。本拠地カンプ・ノウで0-3と敗れた。リーガエスパニョーラの第12節カディス戦(1-2)から2連敗となり、CLにおいてはグループGの2位で決勝トーナメントに進むことになった。
この夏、バルセロナはロナルド・クーマン監督が就任した。だが新指揮官を歓迎する余裕はなかった。リオネル・メッシの退団騒動、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長の辞任。来年1月24日には会長選を控えており、クラブ内外で様々な駆け引きが行われ始めている。
クーマン監督の就任で訪れた大きな変化が布陣変更だった。システムが従来の【4-3-3】から【4-2-3-1】に変わった。クーマン監督は、チームがメッシのためにプレーするのではなく、メッシがチームのためにプレーするという状況を作り出そうとしていた。
それは「メッシ依存」からの脱却という挑戦だった。
■困難な作業
だがメッシ依存から抜け出すのは困難な作業だった。ジョゼップ・グアルディオラ、ティト・ビラノバ、ヘラルド・マルティーノ、ルイス・エンリケ、エルネスト・バルベルデ、キケ・セティエン...。グアルディオラ時代にファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)が発明されて以降、複数指揮官がメッシを中心にチームビルディングを行ってきた。
その間、メッシは2009-10シーズン(35試合34得点)、2011-12シーズン(37試合50得点)、2012-13シーズン(32試合45得点)、2016-17シーズン(34試合37得点)、2017-18シーズン(36試合34得点)、2018-19シーズン(34試合36得点)、2019-20シーズン(33試合25得点)とリーガで7回得点王受賞している。
メッシに頼り過ぎないチームを作るためにシステムチェンジを決めたクーマン監督だが、過去に似たケースがあった。2003-04シーズンのバルセロナだ。
フランク・ライカールト監督のファーストシーズンで、バルセロナはダブルボランチを採用。確かに中盤にはシャビ・エルナンデス、チアゴ・モッタ、フィリップ・コクーと人材が揃っていた。しかしながらライカールトの考えたシステムは機能せず、バルセロナは冬の移籍市場でエドガー・ダービッツを獲得。ワンボランチに移行して、ロナウジーニョが圧倒的なパフォーマンスを見せるようになった。
■中盤の底と重要性
アンカー(ワンボランチ)はバルセロナにとって重要なポジションだ。
ヨハン・クライフの「エル・ドリームチーム」では、グアルディオラがそのポジションを務めた。線が細く、トップレベルで活躍できるフィジカル能力を備えていないというレッテルを貼られていたカンテラーノは、クライフの下で尋常ではない頭の良さを生かして中盤の底からチームを動かしていた。
そして、グアルディオラの系譜を継ぐように、「ペップ・チーム」でブスケッツが台頭した。ヤヤ・トゥーレ、ハビエル・マスチェラーノといった猛者たちに、ブスケッツはポジションを譲らなかった。アンドレス・イニエスタ、シャビ、ブスケッツの黄金の中盤はペップ・チームの成功の鍵になった。
そのブスケッツが、今季バルセロナで衰えを指摘されているのは、示唆的なところがある。一方、先日ミラレム・ピアニッチが少ない出場機会に不満を吐露したように、プランが明確になっていない。クーマン・バルサの中心になると期待されていたフレンキー・デ・ヨングに関してはセンターバックで起用されるなど、ある種便利屋として扱われてしまっている。
今季、バルセロナは負傷者が続出している。アンス・ファティ、ジェラール・ピケ、セルジ・ロベルト、ウスマン・デンベレ、主力が次々に離脱を強いられている。とりわけファティとピケの不在の打撃は大きい。だがメッシ脱却を図るチームで、システムやボランチ起用の目処を立てる必要があるのは確かだ。また、メッシの現行契約は2021年夏までだ。「メッシ後」の時代は現実味を帯びてきている。