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主な新興国経済ニュース(4月19日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

【ルーマニア‐4月19日】ムーディーズ:中東欧3カ国の銀行界、経営赤字続く見通し―ユーロ圏危機で

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニアアナリスト、シモーネ・ザンパ氏は17日、米経済通信社ブルームバーグのインタビューで、ルーマニアとハンガリー、スロベニアの中東欧3カ国の銀行セクターはユーロ圏金融危機が終わるまでは、当分の間、赤字経営が続くとの見通しを明らかにした。オンラインメディアのルーマニア・ビジネス・インサイダー(電子版)が伝えた。

ザンパ氏は、「中東欧の銀行は引き続き厳しい事業環境に直面する。外部、主にユーロ圏から経営悪化リスクにさらされる」とした上で、「特に、ルーマニアとハンガリー、スロベニアの銀行セクターでは経営赤字が続く」と指摘している。

ルーマニアの銀行セクターは過去3年間にわたって経営赤字に見舞われているが、ユーロ圏のメンバーであるスロベニアは銀行の不良債権が増大しているため、いわゆるトロイカ(EU(欧州連合)とECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)の3つの国際機関)による救済策が早晩、必要になるとの観測が流れている。

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【ロシア‐4月19日】丸紅、ロシア国営石油・ガス大手ロスネフチと戦略提携

大手商社の丸紅<8002.T>は18日、ロシア国営石油・天然ガス開発大手ロスネフチの戦略的パートナーとなることで合意したことを明らかにした。今後、両社は極東シベリア地方のLNG(液化天然ガス)事業と、ロスネフチが保有する油・ガス田鉱区の探鉱・開発事業を共同で進める。

17日付のモスクワ・タイムズ(電子版)によると、ロスネフチは、この合意に基づいて、両社は今後、極東でのLNGプロジェクトの実施の可能性について検討する、としている。同プロジェクトでは、LNG生産施設の建設やLNGの輸送、設備・機器の供給、さらには日本のLNG需要家への販売までがカバーされる。

現在、丸紅は、サハリン沖の石油・天然ガス鉱区「サハリン1」の日本側の開発・運営主体であるサハリン石油ガス開発の主要株主として、ロスネフチとも緊密な協力関係にある。丸紅では「今回締結した戦略的パートナーシップ契約の下で、ロシア極東地域でのLNGプロジェクトの実現に向け、マーケティング、プラントの設計・建設、資機材の供給、ファイナンス、輸送、エンジニアリングなどを共同で推進する。ロスネフチが保有する油・ガス田鉱区の共同探鉱・開発も視野に入れる」としている。

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【ベトナム-4月19日】ベトナム財務省、次期国会にVAT減税法案を提出へ―半分の5%に

ベトナム財務省は次期国会にVAT(付加価値税)減税法案を提出する方向で草案の作成に着手した。減税案では現在の10%のVAT税率から、多くの財・サービスに対し半分の5%の新税率を適用することが検討されるもよう。ベトナムのオンラインメディア、ベトナムネットが18日に伝えた。

経済界では高水準の企業在庫を減らすためにVAT減税の導入を要望している。また、法人税減税については、黒字経営の企業は業績改善を狙って法人税減税に積極的だが、反対に赤字企業は法人税減税の恩典は少ないとして消極的になっており、企業間で温度差があるのが実情。このため、政府はVAT減税を実現させることで、国内の消費市場を刺激し、国民の実質所得を引き上げたいとしている。

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【ベトナム-4月19日】スタンダード・チャータード:ベトナム中銀、0.5%ポイントの再利下げの可能性

英金融大手スタンダード・チャータード銀行は、ベトナム中央銀行が景気を刺激し国内企業の経営を支援するため、再度、政策金利を0.5%ポイント引き下げる可能性が高いとの見通しを明らかにした。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)が18日に伝えた。

ベトナム中銀は3月の同国のCPI(消費者物価指数)が前月比0.9%低下する中、先月25日にインフレを抑制し経済成長率の目標を達成するため、主要政策金利である商業銀行への貸出金利となっているリファイナス金利(再割引金利)を1%ポイント引き下げて8%とすることを決めている。

一方、景気動向については、今年1-3月期GDP伸び率が前年比4.89%増となったが、今年全体の成長率見通しについては、世界銀行は1999年以来13年ぶりの低成長となった前年の5.03%増を上回り、5.5%増と予想している。他方、アジア開発銀行(ADB)は9日に発表した「アジア経済見通し2013年版」で、5.2%増と予想している。また、来年については銀行セクターのリストラが進めば5.6%増になると予想しているが、6%増を下回るのは3年連続となり、これは約20年ぶりとなる。

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【インドネシア‐4月19日】インドネシア有料道路運用大手チトラ、今秋にもIPO実施へ

インドネシアの有料道路建設・運用大手チトラ・マルガ・ヌサファラ・ペルサダは、新有料道路プロジェクトの建設資金を調達するため、早ければ今年7‐9月期中に新規株式公開(IPO)を通じて、増資後の発行済み株式の20%に相当する新株を発行する計画だ。ジャカルタ・グローブ(電子版)が18日に伝えた。

新有料道路プロジェクトは、ジャカルタ郊外のデポックと南ジャカルタのジャラン・アンタサリを結ぶ全長21.7キロで、建設に必要な資金は3兆‐4兆ルピア(約300億‐400億円)。同社では新株発行のほか、1兆5000億ルピア(約150億円)の内部留保と遅くても6月までに4000億ルピア(約40億円)相当の社債を発行して賄う方針だ。

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【ブラジル‐4月19日】ブラジル全国産業連盟:中銀の利上げ政策への転換は産業界に打撃

ブラジル経済界を代表する全国産業連盟(CNI)は17日、中央銀行による約2年ぶりの利上げ政策への転換は産業界に大打撃を与えるとして猛烈に批判している。

国営通信アジェンシア・ブラジル(電子版)が伝えたところによると、CNIは声明文で、「インフレを抑制することの重要性は理解できるが、政策金利を0.25%ポイント引き上げて7.5%することで生産活動が大きな打撃を受けても(それでも構わず)インフレと戦う道を選択したことは残念だ」と失望感を顕にし、その上で、「産業界は今年に入っても依然として、昨年暮れからの低調な動きを続けている」と述べ、利上げ転換によって産業界の景気回復の腰が折られると強い懸念を示した。

また、CNIは、利上げへの政策転換によって為替相場がドル安・レアル高に向かい、輸入が刺激される一方で、海外でのブラジル製品の国際競争力が弱くなると主張。「結果的にインフレが加速し、経済成長が鈍化するという最悪シナリオに陥る」と痛罵している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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