英国が「鉄道再国有化」へ!英国議会でチャールズ国王が「施政方針」 日本もこの流れに続くべき?
コロナ禍を機に再国有化方針へ
2024年7月17日、英国で議会が開会し、14年ぶりに政権交代した労働党政府の施政方針をチャールズ国王が読み上げ、経済成長の実現や鉄道再国有化といった重点政策を示した。
英国の鉄道は1997年に完全民営化。列車運行と線路インフラの保有・管理を別々の組織が担う「上下分離」方式を採用し、列車の運行に民間企業を多数参入させるシステムによって運営が続いてきた。民営化後の英国の鉄道運営は、上下分離の「下」にあたる線路や信号、駅などのインフラの保守管理は運輸省傘下の「ネットワークレール」が担っている一方で、列車の運行事業は20社ほどの民間の列車運行会社が担う。
英国の鉄道は、運輸省が民間の列車運行会社に運営権を与える「フランチャイズ制度」により運営が行われているが、コロナ禍で旅客需要が蒸発したことによって民営化の軸となっていたフランチャイズ制度の維持が困難になったことから、鉄道の再国有化に向けて舵が切られることとなった。
英国議会で読み上げられた「施政方針」では、鉄道については各地の鉄道事業を一括管理する公的機関の新設を進めるという。英国は、鉄の女・マーガレット・サッチャー首相時代の「小さな政府」から「大きな政府」に180度舵を切ったともいえる。
日本も再国有化に踏み切るべき?
日本においても、コロナ禍で鉄道各社の旅客需要が蒸発し、業績が悪化したことから各地のローカル線で存廃問題が噴出することになった。
そもそも国鉄分割民営化によって1987年に発足したJR各社は、JR会社法に基づく「大臣指針」を遵守し、「国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえて現に営業する路線の適切な維持に努める」ことを前提としている。経営環境の恵まれた本州3社については、大都市圏や新幹線で安定した収益を確保できることを担保として内部補助によって全路線の維持を図れるように、経営環境が厳しい3島会社についても経営安定基金の運用益によってあらかじめ予想された適正な赤字額を補填できるように制度設計された。
しかし、JR東日本やJR西日本エリアではコロナ禍が収束し業績が十分に回復した後もローカル線の存廃問題が収束することはなく、さらに経営安定基金の運用益で赤字の穴埋めをするとされた3島会社のうち特にJR北海道は、バブル経済の崩壊による国のゼロ金利政策により経営安定基金による運用益が激減したことから深刻な経営問題を抱えるに至り、国鉄改革時に想定したJRグループの制度は完全に陳腐化しているともいえる。
こうした状況を放置すれば日本の鉄道は、大都市圏と新幹線以外は残らなくなるという指摘もある。今後、トラックドライバーやバスドライバー不足への対応、そして国防面からも重要となる日本の鉄道ネットワークの維持を図るためには、再国有化というのもひとつの選択肢なのではないだろうか。
(了)