もう出会えないと思っていた赤福さんの「竹流し水ようかん」こし餡の甘味と絡み合う生竹の清涼感
去る今年の2月。三重県伊勢市にて約300年余りの歴史を紡ぐ和菓子屋「赤福」さんより、衝撃的なニュースが飛び込んでまいりました。
毎月一日限定で販売される月ごとの和菓子のうち、七月に販売されていた「竹流し水ようかん」が休止になるということ。昨今の社会情勢により、生竹の入手が困難になったというのが大きな理由の一つだそうです。竹を加工するにも運搬するにも、電気やガソリンといった資源を使用いたしますしね…苦渋の決断だったかと思います。
ちなみに毎月一日限定で販売される「朔日餅」と申しますのは、その月の初日の朝早く、無事に一か月過ごせたこととまた一か月健やかに過ごせるよう伊勢神宮へお参りをする習慣が伊勢市を中心に根付いており、その際に参拝者の活力になるよう餅菓子でもてなしたということが由来だそうです。
どんなに大手の和菓子屋さんにですら、こういった問題は影響を及ぼすのかと。
そんな折、先日期間限定で都内の催事にて復活するということを聞きつけ、さっそく足を運びました。細筒ではありませんが、生竹の容器とクマザサの葉に抱かれた水ようかんがそこにならんでいるではありませんか…!まだお目にかかったことのない方へぜひご紹介しようと思い、こちらを選びました。
二個入りの商品は、それぞれ空気に触れないようしっかり個包装になっているので、その滴るような艶めきをそのまま体感できるのも嬉しいところ。紐を解く指先と竹容器を支える手も潤います。
美麗なこし餡の色をそのまま落とし込んだ水ようかん。ほんのり青く、それでいて小豆の紅の温もりも漂う、さすが赤福さんというべき調整でしょうか。やや意外だったのが、淡い色合いながらもしっかりとした保形性のあるところ。ようかんの蜜の水分が生竹の容器にも幾分移り、ある程度引き締まるのでしょうか。もしくは糖度を上げることで運送に耐えられるようにしているのか。普段は遠方まで運びませんものね。
その味わいは思わず頬がほころぶ甘味。あくまで優しい甘味なのですが、青竹やクマザサの葉の和のハーブのような青々しい爽快感に負けない、むしろそれすら味方につけているような甘味です。このくらい強かな味わいでなければ、青いえぐみが際立ってしまうかもしれません。濃厚な食感と歯応えでありながら、するするといくらでも食べられてしまいそうな水ようかんです。
滴るようなしずる感
細長い面持ちとは異なりますが、この機会を逃してたまるかと思っていたので非常に嬉しい出会いでした。どんなに人気の御菓子であれ、どんなに大手であれ、いついかなる理由で食べられなくなってしまうかわからないもの。
これは和菓子に限らずどんなものにでも共通することだと思いますが、私に関してはそれが和菓子に対する思いに傾倒しているというところでしょうね。