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アマゾン、レストラン料理のデリバリー事業を強化、サービス開始から半年、対象地域を米国の7都市に拡大

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムは昨年9月、同社の本社があるワシントン州シアトルで、レストランの料理を配達するサービスを始めたが、それ以降、同サービスの対象地域を着々と増やしている。

1時間以内に料理を届けるサービス

2月16日、同社は米カリフォルニア州サンディエゴでも同サービスを開始すると発表した。新たに対象とするのは、サンディエゴの16の郵便番号(ZIPコード)がカバーするエリア。また2月16日時点で、これに参加するレストランは約90店あるという。

このレストラン料理のデリバリーサービスは、同社の会員制プログラム「Prime(プライム)」の会員向けに提供している、最短1時間以内で商品を配送する「Prime Now」で利用できる。

利用者はPrime NowのモバイルアプリでZIPコードを入力し、レストランを探したあと、メニューを選んで注文する。すると、アマゾンの配達ドライバーがレストランに行って料理を受け取り、顧客に届ける。

配達までの所要時間は、Prime Nowの最短時間と同じく1時間以内。だが、サービス開始以来これまでの平均時間はわずか39分だとアマゾンは説明している。

なおPrime Nowの1時間以内配達は、1回当たり7.99ドルの配達料がかかるが、このデリバリーサービスは今のところ配達料がかからない。アマゾンによると、料理にはサービス料を加えた特別価格などは設定せず、顧客には透明性のある価格を提示しているという。

このデリバリーサービスは昨年9月8日にシアトルの一部のエリアを対象に開始した。その後同社は、ロサンゼルス、シカゴ、オースティン(テキサス州)、ボルティモア(メリーランド州)、ポートランド(オレゴン州)にも拡大し、今回7番目の地域としてサンディエゴを加えた。

「Prime」の特典を拡充

アマゾンはこうしてPrimeの特典を拡充し、同プログラムの会員をさらに増やしたい考えのようだ。

米国におけるPrimeの年会費は99ドル。その特典には、追加料金なしで商品が2日以内に届く配送サービス、前述の1時間以内配送サービス「Prime Now」、そして映画やテレビ番組、音楽を追加料金なしで楽しめる「Prime Video」「Prime Music」、写真を無制限にアマゾンのクラウドサービスに保存できる「Prime Photos」などがある。

またアマゾンの電子書籍端末「Kindle」シリーズや、「Fire」シリーズのタブレットとスマートフォンの所有者には、電子書籍を1カ月に1冊無料で借りられる「Kindle Owners' Lending Library」も用意している。

このほか、アマゾンのサイトや傘下のアパレル商品サイト「MYHABIT.com」の会員先行セール、米国では一部の地域でPrimeの上位版サービスとなる生鮮食料品の即日配達サービス「AmazonFresh」も提供している。

AmazonはPrimeの会員数を公表していない。だが先頃、米国の市場調査会社CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)がまとめたリポートによると、米国におけるPrimeの会員数は1年前から35%増加し、5400万人に達した。

米国のアマゾンの全顧客に占めるPrime会員の比率は47%。また5400万人とは米国の成人人口である2億4600万人の21%に当たる。これを世帯ベースで見ると、米国では46%の家庭がPrimeに加入しているとの推計になり、アマゾンはその年会費だけで1年に50億ドル以上を稼いでいるという。

ただ、昨年の会員数の前年比伸び率(35%)は、一昨年の伸び率(54%)を大きく下回った。CIRPはこれについて、米国ではPrimeの普及が成熟段階に入っており、伸び率の減速は今後も続くと予測している。アマゾンにとっては会員の定着が今後の重要な課題になるという。

すでに多くの新興企業が参入

こうした状況の中、同社のレストランデリバリーサービスは、Prime会員拡大策の一環と見られている。ただし、モバイルアプリを使ったフードデリバリーの分野にはすでに多くの新興企業が参入しており、競争が激しいと米フォーチュンは伝えている。

例えば、買い物代行サービスの米ポストメイツ(Postmates)や、モバイルクレジットカード決済の米スクエア(Square)が買収した米キャビア(Caviar)、米ドアダッシュ(DoorDash)といった企業が同様のサービスを提供している。

また配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)には「UberEats」というサービスがある。こちらは以前、昼食時に限定してサービスを提供していたが、今年1月、米国の10都市で終日サービスを始めたとフォーチュンの記事は伝えている。

JBpress:2016年2月18日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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