オートバイのあれこれ『世界最小の2ストツイン!HX90』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『世界最小の2ストツイン!HX90』をテーマにお送りします。
1960年代から70年代の時代に生まれてきた日本のオートバイというと、ホンダの『CB750FOUR』やカワサキ『750RS』(Z2)など、大型モデルが筆頭としてよく挙げられますが、実は小排気量クラスにおいても、興味をそそられるバイクというのがいくつかありました。
今回取り上げるヤマハ『HX90』も、そんな小型バイクのうちの一つといえるでしょう。
HX90が登場したのは、1971年(昭和46年)のこと。
65年にデビューした『AT90』の後継車として現れました。
HXの一番の見どころが、パワーユニットです。
なんと、90ccと小さい排気量ながら、2気筒エンジンを搭載していました。
レースの世界では、ホンダのWGPマシン『RC115』の50cc2気筒エンジンなどがあったものの、一般向けの量産エンジンとして90ccの2気筒というのは他に例が無く、HXは市販車の中では世界最小レベルの2気筒マシンだったのです。
もっとも、このエンジンは先代のAT90から受け継いだものなので、「HXに唯一無二!」ということではありません。
しかし、ヤマハはHXへ搭載するにあたってATの頃から大幅に性能を高めており、この世界最小ツインエンジンはHXでもって一気にその知名度を上げたといって差し支えないでしょう。
参考のためピークパワーとピークトルクを記しておくと、
〈AT90〉ピークパワー:8.2ps/ピークトルク:0.75kg-m
〈HX90〉ピークパワー:10.5ps/ピークトルク:0.96kg-m
となっていました。
車重もATより4kg程度軽く仕上げられており、HXは軽いボディとハイパワーなエンジンを武器に125ccクラスのモデルにも引けを取らない速さを見せたといわれています。
HXはデビュー後4年ほど生産が続けられ、74年(昭和49年)に後継の『RD90』へとバトンタッチ。
RDは単気筒エンジンを搭載しており、ここでヤマハの90cc2スト2気筒は消えることになるのでした。