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3階級制覇チャンプの射殺犯が事件から9年3ヵ月後に逮捕

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 抜群のスピードとトリッキーな動きで、スーパーフェザー、ライト、スーパーライトと3階級を制したサウスポー王者、ヘクター・"マッチョ"・カマチョ。プエルトリコから誕生した15人目の世界チャンプである。

 2012年11月24日に50歳で永眠してから、早いもので10年以上が経過した。息を引き取る4日前、カマチョは故郷、バヤモンのパーキングに停めていた黒いムスタングの車内で、左顔面を撃ち抜かれた状態で発見された。隣の席に座っていた友人も絶命しており、車内からはコカインが見付かっている。

 カマチョは、即、救命病棟に運ばれ、治療が施されたが、2日後に脳死。そして事件から4日後に還らぬ人となった。

写真:ロイター/アフロ

 カマチョの死後、なかなか犯人が挙がらないままだったが、2022年3月9日に5人の容疑者が逮捕された。そのうちの4名は別件で服役中であり、残る1名はバヤモンで手錠をかけられた。

 カマチョが撃たれた車で発見された遺体の他にも、死者が確認されており、同事件は計3人が殺害されている。

写真:ロイター/アフロ

 ブルース・リーに憧れ、ヒスパニックハーレムでストリートファイターとして鳴らしたカマチョは、11歳で本格的にボクシングを始めた。

 プロでは、88戦79勝(38KO)6敗3分け。ホセ・ルイス・ラミレス、エドウイン・ロサリオ、レイ・マンシーニ、フリオ・セサール・チャベス、グレグ・ホーゲン、フェリックス・トリニダード、ロベルト・デュラン、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ等、あの時代のトップファイターたちと拳を交えた。

 しかし、事件から10年近く犯人に辿り着けなかったというのは、警察の怠慢と言えまいか。同時にカマチョが闇社会で生きていた事実も突き付けられた気がする。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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