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【神戸市長田区】感じて、知って、考えて。自分だけの楽しい学びが得られる「外来生物展示センター」

くりあんぱん神戸の日常系webライター(神戸市)

長田区苅藻島町にある「外来生物展示センター」をご紹介します。名前に「展示」とありますが、展示物を見るだけでなく、生体や標本を触ったり、体感を通して瑞々しい学びを得る事ができる画期的な施設です。

公式ホームページ 外来生物展示センター


外来生物展示センターは、全国初の「自治体が運営する」外来生物に特化した啓発施設として、2022年8月にオープンしました。神戸は市内で山海をはじめ様々な地形が見られ、とても豊かな生物多様性を持つ場所です。しかしながら、近年、日本には海外から増々多くの貨物が輸入され、外来生物が侵入するリスクが高くなっており、神戸市も例外ではありません。外来生物の中には、在来の生きものに影響を与えたり、農業被害などの人間に影響を及ぼしてしまうものもいるため、早期に対策を行なっていくことが重要です。外来生物の侵入は生物多様性の危機の一つとなっており、神戸の豊かな生物多様性を保全するためには、外来生物対策を進めていく必要があります。その一歩として、外来生物問題について正しく知り、理解を深めるために、神戸市は全国に先駆けて当施設を作りました。

神戸市営地下鉄海岸線「苅藻駅」から南へ徒歩15分前後、苅藻島クリーンセンター2階にあります。当館は「展示ホール」と「生物飼育棟」に分かれており、先に展示ホールを見学します。

正面玄関から、緑色に舗装された歩道を奥に進みます。

渡り廊下のすぐ手前を左、少し隠れがちなドアが入口です。

最初に、スタッフさんのパネル解説があります。親しみやすい表現と深く掘り下げられた知見から、知識を体系化して得ることができます。

広々とした展示ホールには、スポット的にコーナーが配置されています。従来の博物館等のように決められたルートを進むのではなく、感性のまま、興味を惹かれる所から自由に体験できるので、小さなお子様も利用しやすいスタイルです。

剥製の多くはケースに入れられる事なく展示されています。間近で見るだけでなく直に触るのもOKです! こちらの動物はアライグマ。驚くほどふわふわで心地よい肌触り、ぜひ体験してみてください!

愛嬌と個性のある顔立ちや尻尾、いつまでも撫でていたくなる触り心地。ペット需要で輸入されたアライグマですが、鋭い牙や爪、成熟すると専門家でも手に負えなくなる程の気性の荒さを持っています。野生化した個体はどんどん繁殖していき、深刻な被害をもたらしています。

左:アライグマの被害に遭ったスイカ。まるで人間が道具を使って開けたようで驚きです。
右:アライグマの手先の器用さを、よく比較対象とされるタヌキと合わせて体験することができます。

ここまで紹介したような詳細な解説が、アライグマだけでなくそれぞれの外来生物に対して、丁寧に掲示されています。

「ABどっちに行く?」とワイワイ相談しながら参加できるクイズに

釣果を外来種・在来種・ゴミに正しく分ける魚釣りゲーム、

実物の標本を拡大して覗くことができる顕微鏡、

駆除された命を有効活用する一例(こちらは外来植物を使った草木染め)など、楽しく多角的に学ぶことができます。

「生物飼育棟」では、水棲の外来生物と、その影響を受けている在来種が飼育されています。

実際に触れ合える生き物もいます。

在来種で特別天然記念物の「オオサンショウウオ」と外来種「チュウゴクオオサンショウウオ」の交雑個体。当センターで一番新しい生き物です。

ウシガエルです。私には、体が小さいと他のカエルと見分けられる自信がありません。在来種のつもりで特定外来生物を生きたまま持ち運んでしまう(ウシガエルでこれをやると法律違反で罰せられます)だけでなく、外来生物と間違えて貴重な在来種を駆除してしまうリスクを考えると、ぞっとしてしまいます。


見学後、スタッフさんに「皆さんにお伝えしたい事はありますか?」と問うと、「当館は『感じる・知る・考える』がテーマですので、皆様それぞれが感じて考えた事を大切にして頂けたら嬉しいです」と朗らかに答えて下さいました。

生物飼育棟の水槽はどれも清潔で、人に寄ってくる個体が多く、愛情込めて飼育されている事が伝わってきます。素直に「かわいい、この命を大切にしたい」という気持ちになりました。こうして愛着形成しながら、命は互いに関わっていく…外来生物に対してもそれは同じで自然な事なのですね。
そして、正しい知識を得た後は、正しく行動するのみです。外来生物を広げ続けた未来と、正しい知識に沿って行動した未来。きっと結果は違うし、何より、結果に関わらず行動実績が現実として残ります。それが思わぬ形で他分野に良い影響をもたらすかもしれません。
「素直な感情を大切に」「前向きに取り組む」 この2つが、今回ここで私が得た学びです。


本記事、当初は自由研究を意識し夏休み期間に公開する予定でした。しかし見学から得たものは、理科分野というより道徳的な学び。意外すぎて自分でも驚いています! そんな経緯で、9月20日~26日の動物愛護週間に合わせて公開を延期しました。

参考サイト:環境省_動物愛護週間 [動物の愛護と適切な管理]


皆様もぜひ、外来生物展示センターであなただけの楽しい学びを得て、周りの方々と分かち合ってみてくださいね。

●外来生物展示センター●
〒653-0033 兵庫県神戸市長田区苅藻島町3丁目12−28 苅藻島クリーンセンター内
営業時間 土・日曜日 11:00-12:30 / 13:30-15:00 / 15:30-17:00 要予約・無料
電話番号 なし
公式ホームページ 外来生物展示センター

神戸の日常系webライター(神戸市)

神戸でささやかに暮らしている一市民。大好きな町神戸の魅力を、心地よい日常から拾い上げて大切にお届けしていきます。記事を通して皆様と「わくわく」「ほっこり」な気持ちを分かち合えたら嬉しいです。よろしくお願いします!

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