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2017年のなでしこリーグで躍進するのはどのチームか?ーちふれASエルフェン埼玉(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
今シーズンの開幕戦は昨年2冠のベレーザと対戦する(写真左:DF 松岡沙由理)(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

2月15日(水)〜19日(日)まで、千葉県内で、なでしこリーグ1部と2部、韓国のクラブ1チームの計9チームによる千葉交流戦が開催された。

3月26日のなでしこリーグ開幕に向け、各チームがどのような仕上がりを見せているのか取材した。

今回は、ちふれASエルフェン埼玉(以下:埼玉)の2017年シーズンを展望する。

埼玉は昨シーズン、なでしこリーグ2部で2位になり、1部と2部の入れ替え戦でコノミヤ・スペランツァ大阪高槻に勝利(2戦2勝)。2年ぶりの1部参入の権利を勝ち獲った。埼玉は2012年からの5年間で、2度の2部降格を経験しており、まずは1部定着が命題となる。

昨シーズンからチームを指揮する元井淳監督は、「1年で降格するチームにはしたくない」と、昨シーズンから1部リーグでの戦いを見越し、競った試合で勝ち切るための地力をつけることを目指してきた。

サッカーのスタイルは、攻撃に特徴がある。「守りに入って勝てるチームではない」(元井監督)と、攻撃のパターンを増やし、決定力アップも課題としてきた。

シーズンオフには引退した2選手も含め、11人がチームを離れた。中でも、2013年に加入後、背番号10を背負って2度の1部復帰を牽引したMF伊藤香菜子と、FWの荒川恵理子のベテラン2人の移籍は大きい。試合の流れをコントロールするベテランが抜けた穴は、そう簡単に埋まるものではないだろう。

1部に昇格したばかりの埼玉にとって、今は変化を受け入れ、耐える時期なのかもしれない。

新加入の顔ぶれを見ると、スフィーダ世田谷FC(2部)より、中村ゆしかを補強。中村は2012年のU-20女子ワールドカップに出場した経歴を持ち、DFからFWまで幅広くこなす。そのほか、大学から3選手を獲得し、下部組織のASエルフェン埼玉マリから4選手をトップチームに昇格させた。

千葉交流戦の結果は、2分3敗。新たなコンビネーションのバランスを探る中で、手探りな部分も見られたが、一つひとつの実戦経験が1部リーグでシーズンを通して戦う上で貴重な糧になる。

元井監督は、「いろいろなメンバーの組み合わせで、良いものが出てくるようにトライしている段階」と話した。

【チームをけん引するダイナモ】

このチームの象徴とも言える選手が、MFの薊理絵(あざみ・りえ)だ。豊富な運動量を最大の持ち味とするアタッカーは、90分間、サイドを何度も駆け上がってチャンスを演出し、自らもゴールを狙う。2013年と2015年にはなでしこジャパンに選出されたこともある。

チームが1部と2部を行き来する中で、周りの環境やチームメートの顔ぶれもめまぐるしく変化したが、薊は2007年から埼玉一筋を貫いてきた。

1部リーグでシーズンを戦い抜き、生き残ることの厳しさは、誰よりも知っている。

「私たちは気持ちを強く持って、チャレンジャー精神を持ち続けなければいけないですし、最後まで、(足の)指先まで力を込めて全身で戦う、その意識を全員が持たなければいけないと思います」(薊)

キャプテンにはMFの中野里乃が選ばれた。21歳と若いが、埼玉では4年目になる。

「妥協することがない選手で、頼もしいですし、しっかり自分もサポートしていきたい」と、薊も期待を寄せる。

元井監督は、今シーズンのチームのテーマとして「サッカーの本質を追求することと、技術を追求すること」を掲げた。

今シーズン、埼玉が戦うなでしこリーグ1部には、昨年とほとんど変わらない顔ぶれでチーム力を充実させているチームも多く、「残留」という目標は、高いハードルである。

だが、薊が言ったように、(足の)指先まで力を込めて目の前の1試合1試合に全力を注ぎ、シーズンを通じて個々がレベルアップしていくことで、状況は変えられる。接戦をどれだけものにできるかが、今シーズンの埼玉の浮沈を分けるカギとなりそうだ。

開幕戦(3/26・味の素スタジアム西競技場)の相手は、昨シーズン2冠の日テレ・ベレーザ。女王相手に、チャレンジャーがどのような戦いを見せるのか、楽しみである。

クラブ情報

ちふれASエルフェン埼玉

(2)【監督・選手コメント】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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