東京ゲームショウ 幕張メッセで復活も三つの課題 インフルエンサー招待効果はいかに…
日本最大のゲーム展示会「東京ゲームショウ2021」が9月30日~10月3日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されました。昨年は新型コロナウイルスの影響でオンラインのみ。今年も一般来場者はオンライン限定となりましたが、幕張メッセはメディアやゲーム会社の関係者が足を運びました。浮かび上がった三つの課題を考えてみます。
◇現地取材の意味薄く 『押し』のない苦しさ
今年のゲームショウのポイントは、小規模ながらもリアルイベントを開催できたことでしょう。一般来場者は幕張メッセには入れないものの、ゲーム専門メディアはもちろん、新聞社やテレビ局も取材に訪れました。ゲームショウのテーマの一つに、一般社会にゲーム産業を認知させてイメージアップを図ることがあります。そういう意味では、一定の役割は果たせたと言えます。
ただし各社とも、記事にするのが大変だったのは、各社の見出しを見ても感じるところです。見出しにVRを入れても新味やワクワク感が薄く、想像しづらいのです。
東京ゲームショウ開幕=初のVR会場も(時事通信)
東京ゲームショウ開幕 SNSの人気投稿者通じPR(共同通信)
会場 リアルもVRも 東京ゲームショウ開幕(読売新聞)
東京ゲームショウ開幕 今年はリアルとオンライン(産経新聞)
余談ですが、産経新聞が「存在感増す中国勢」という解説記事を配信しました。そこで会場で取材した他の記者・ライターらに、中国勢の存在感について質問すると「出展社数だけの話では? あの小さな会場で中国の存在感があるかといわれると厳しい。中国のゲーム規制問題に関連づけたい狙いは分かるけれどね」と苦笑していました。
それでも「ゲームショウのネタがヤフトピになったのは良かったかも。そのぐらい今回のゲームショウは『押し』がない。現地取材に行く意味が薄く、オンラインでほぼ決着してしまう」と嘆いていました。
確かに、タレントを起用したオンラインツアーや、人気ゲームクリエーターのオンライン・トークショー、各社の新作発表映像などは、十分楽しめるものでした。オンラインの発信がしっかりしたとも言えますね。
◇インフルエンサー効果いかに
1996年から25年目を迎えたゲームショウですが、コロナのせいで大転換を迫られているのは確かです。今後コロナが収束したとしても、元通りの大規模なリアルイベントになるか?といえば、「元に戻るのは厳しい」という関係者の声ばかりでした。そこで浮かんだ課題なのですが、三つにまとめてみました。
一つ目は、インフルエンサーを招待した効果が、どう出るかです。今回は会場が狭く、ユーザーのコスプレもなく、画的には厳しいものがあります。初めてなので、試行錯誤するしかありません。また動画の編集にこだわるインフルエンサーは、公開までそれなりに時間がかかるらしく、後日の配信に注目といったところでしょうか。
来年以降も、インフルエンサー重視の流れは続くでしょう。そして時間をかけても動画の面白さを追求する考えは、速報にこだわる既存メディアと差別化できます。ゲーム会社は取材者をコントロールしたがる傾向にあり、その兼ね合いという課題はありつつも、自由度の高いインフルエンサーの長所が出れば、既存メディアにない視点のコンテンツになるかもしれません。人気次第では、既存メディアは脅威に感じるのではないでしょうか。
二つ目は、ここ数年ゲームイベントの費用対効果を見直す動きがあることです。ゲームは元々、オンライン発表と相性が良く、任天堂やソニーは定期的にオンラインの発表をしています。任天堂はゲームショウに過去1回しか出展していませんし、ゲームショウの直前にオンライン発表会を実施しました。
またゲームショウのリアルの出展は、結構なコストがかかるので、オンラインだけで宣伝効果が出るなら、それだけで済ませたい考えの関係者もいるでしょう。ましてや、大手のゲーム会社は、コロナ禍でリアルイベントがなくても事業が好調です。コロナの追い風であることは分かっていても、「コスト(宣伝)の見直し」は浮上する問題なのです。
三つ目は、今後のゲームショウの位置づけです。オンライン化が進み、費用対効果が重視され、大手ゲーム会社が次々と出展を見送るようになれば、ゲームショウ自体の発信力・影響力は低下します。そうすれば、普段ゲームを扱わない大手メディアは、ゲームショウに足を運ばなくなる可能性があります。
コアなゲームファンは、それで問題ありませんが、新規ゲームファンの取り込み、業界のイメージアップという意味ではマイナスです。また有力コンテンツを持ち、情報発信力のある大手ゲーム会社は良いにしても、中小ゲーム会社からすると、ゲームショウの宣伝効果が薄くなるのは歓迎できません。
繰り返しますが、以前のような「密」になるゲームショウにすぐ戻ると考えるのは、正直厳しいでしょう。そしてゲームショウ開催の意味について、どう位置づけるのか。悩みは続きそうです。