<任天堂決算>大幅な減収減益も高水準の利益率 資料に見える「本音」も
任天堂は2024年度の第2四半期(中間期)連結決算を発表しました。メディアの目線を交えながら、決算のポイントを説明していきます。
◇大幅な減収減益も営業利益率高く
中間期(4~9月)の売上高は約5232億円(前年同期比34.3%減)、本業のもうけを示す営業利益は約1215億円(同56.6%減)。前年度の同期と比べると、大幅な減収減益でした。
ただし減収減益と言っても、営業利益率は20%を超え、営業利益は1000億円をオーバーするなど高水準をキープ。「もしも」の話になりますが、昨年に大ヒットした「ゼルダの伝説」が、前年度でなく今年度に発売されていたら「V字回復」の増収増益になっていたかもしれません。
そもそも家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の出荷数のピークは4年前の2020年度。にもかかわらず、売上高予想も1兆円を超えています。ちなみに7年前は売上高が5000億円を割り込んでいたときもあったのですから。
ところがメディアの記事の見出しを見ると、業績が相当落ち込んできたイメージを抱きます。
・任天堂中間決算 主力ゲーム機の販売伸び悩み減収減益(NHK)
・任天堂、中間決算は減収減益 24年9月連結 「スイッチ」販売減速(毎日新聞)
・任天堂の純利益60%減 4~9月、後継機控え知財保護前面(日本経済新聞)
記事は、あくまで「増収増益を良し」とする経済・経営視点での話です。増収増益は前年度と比べての話であり、前年度が極端に良ければ、次の年度はキープするのは一苦労です。特にエンタメ企業は、ヒットの有無で業績が乱高下するため、「減収減益でも、業績は良い」というのは、珍しくありません。
決算の記事を書くのであれば、前年度の比較は当然ですが、読者それに全面的に付き合う必要はありません。こだわりすぎると、高い営業利益率をスルーしてしまうからです。
◇見える「本音」 中長期の視点で見て
さて話は変わりますが、決算の補足資料を見ると、任天堂の主張したい「本音」が伝わってきます。簡潔に言うと「短期の決算数字を見るよりも、中長期の視点で見て」と言うことです。
・「2025年3月期 第2四半期決算説明会/ 経営方針説明会(オンライン) プレゼンテーション資料」
昨年も同様の資料があるのですが、前回はコンテンツの話が多いのに対して、今回は戦略面への言及が強まっています。資料は全58ページあるのですが、決算の話は2ページのみ。以降は自社の戦略について丁寧に説明しています。
アクティブユーザーの動向、ゲームビジネスを取り巻く環境、任天堂の戦略(家庭用ゲーム機と携帯ゲーム機の統一によるソフト開発資源の集中運用)、日米欧以外の市場の強化などにも触れています。ゲームビジネスは、ゲーム機のピークアウト後に業績が落ち込むのは当然で、次を見据えてさまざまな手を打っていること、それを少しでもメディアや投資家に理解してもらうのが狙いでしょう(それがまた大変なのですが)。
もっとも説得力があるのは、「後継機種」の詳細をある程度明かし、未来に向けての布石を説明することです。しかし、それをすると年末商戦に悪影響の出る可能性があり、悩ましいところです。
ともあれ、今回の通期業績予想が下方修正されたことで、メディアから「ニンテンドースイッチの後継機種は?」というトーンがより強まるでしょう。もちろんコアなゲームファンも同様です。
より具体的には、決算内の2025年3月までに出すのか、出さないのか……ということです。経済系メディアは、通期の業績ありきで考えます。後継機種が来期(2025年4月以降)になれば、その決定に異議を唱える声も大きくなるでしょう。“外野”の批判に耐え、当初の戦略を押し通せるか注目です。
・任天堂、スイッチ後継機が反転の鍵 今期中に発表 業績予想下方修正で正念場(産経新聞)
任天堂の通期予想ですが、売上高が1兆2800億円、営業利益が3600億円。なお任天堂の貸借対照表(BS)には「現金及び預金」は約1兆3400億円、「有価証券」は約6800億円もありました。
仮にゲーム機とソフト販売が振るわず、通期の見通しを大きく下回っても、余裕がありそう。「正念場」と言われると危機的なイメージがを受けますが、BSでは危機的な雰囲気が、まったく出ないところに恐ろしさを感じます。