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ジダンの寵愛と、覚醒するベンゼマ…戴冠に向けてギアを上げるレアル・マドリー

森田泰史スポーツライター
パリ・サンジェルマン戦のベンゼマ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

「決戦」まで、調子を落とすわけにはいかない。一時はジネディーヌ・ジダン監督の解任騒動が巻き起こったレアル・マドリーだが、チャンピオンズリーグ・グループステージのガラタサライとの2試合(第3節アウェー戦/第4節ホーム戦)で連勝して、風向きが変わっている。

マドリーはウィンターブレーク前にバルセロナとのクラシコを控えている。10月に行われる予定だった一戦は、カタルーニャの独立運動の余波を受け、日程が変更された。リーガエスパニョーラの行方を争う大一番が先送りにされ、その間にフェデ・バルベルデやロドリゴ・ゴエスという若手が台頭した。ただ、現在、チームの中心にいるのはカリム・ベンゼマだろう。

■到着した新戦力

この夏、エデン・アザールがマドリーに加入した。しかし、トップレベルの選手でさえ適応は簡単ではない。アザールが輝きを放ったのは、マドリー加入後、11試合目だった。リーガ第13節エイバル戦(4-0)、プレミアリーグでドリブルキングの異名を取ったベルギー代表のアタッカーは相手守備陣の脅威となった。出場時間825分ーー。それが、アザールが適応に要した時間だった。

昨季、チェルシーで21得点17アシストを記録したアザールに、求められるものは少なくない。2018年夏に去ったクリスティアーノ・ロナウドの穴を埋めるべく、ジダン監督が彼を獲得したのは明らかだ。「未来を担う存在だ。目を閉じて、彼をマドリーに加入させたとしても、絶対に失敗はない」とジダン監督がアザールを評したのは2010年のこと。ジョゼ・モウリーニョ当時監督の下で、スポーツディレクターに正式就任する、少し前だ。

アザールが適応に腐心していた折、得点源となったのがベンゼマである。今季、ベンゼマは公式戦で14得点を挙げ、2011-12シーズン(32得点)、18-19シーズン(30得点)を上回る勢いでゴールを量産。リーガでは10得点を挙げ、そのうち6ゴールがチームの先制点となっている。「世界最高の9番はベンゼマだ」とは、ジダン監督の弁である。

■役割の変化

C・ロナウドが去ってから、ベンゼマの役割は変化した。絶対的なエースが抜けて以降、ベンゼマは公式戦で44得点を記録している。それは欧州のトップリーグで4位の数字だ。彼の上に位置するのはロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン)、リオネル・メッシ(バルセロナ)、キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)のみだ。

また現在のマドリーにおいては、前線の決定力が担保され、守備の向上と中盤の競争活性化という好循環が生み出されている。

GKティボ・クルトゥワはリーガ第14節レアル・ソシエダ戦で、マドリーで535分という無失点記録を達成した。ケイロール・ナバスの記録(534分/2014-15シーズンから2015-16シーズンにかけて達成)を破っている。

そしてカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースという盤石の中盤に、F・バルベルデというピースが加わった。シーズン半ば、イスコもコンディションを上げてきており、ポジション争いは激化している。4-3-3と4-4-2、2つのシステムを使う可能性を含め、ジダン監督の嬉しい悩みになっていることだろう。

ここまで、マドリーの全得点の約24%が、中盤の選手たちによって記録されている。また、先のアラベス戦ではダニ・カルバハルがゴールを決め、計14選手が得点を挙げる運びとなった。これも、厳しい競争の成せる業かもしれない。完全に再生したレアル・マドリー、その視界は良好だ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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