新しい職種:BizDev(ビズデブ)とは何か? 必要な3つのスキルを解説する
■「BizDev(ビズデブ)」って何なの?
「ビズデブって何?」
「どんな職種?」
昨今、スタートアップや外資系の企業で「BizDev(ビズデブ)」の募集が目につく。私は組織営業力アップの支援をしているコンサルタントだ。多くの営業関連の第一人者とコンタクトをとるが、彼ら彼女らも昨今、この新しい職種――「BizDev(ビズデブ)」について頻繁に言及している。
「BizDev(ビズデブ)」とは「Business Development(ビジネスディベロップメント)」の略であり、日本語にすると「事業開発」という意味だ。
正直なところ、これだけではさっぱりわからない。日本語で「事業開発」と聞いても印象が薄い。近年存在感を増している営業の新しい潮流「インサイドセールス」や「カスタマーサクセス」に比べるとインパクトに欠ける。ネーミングから新しさが伝わらないからだ。
言葉の意味から考えよう。「事業開発」は分解すると「事業+開発」になる。新しい事業を起こし、成長させることであろう。
メルカリではどう定義しているか。もう少し広義な意味合いで、
「外部の事業者様との結びつきにより事業を拡大していくこと」
と「BizDev(ビズデブ)」を定義している。
新規事業の起ち上げのみならず、既存事業の拡大も含むということだ。そして自社のマーケティング活動のみならず、積極的に「M&A」や「アライアンス」も活用することになるため、「BizDev(ビズデブ)」という職種は、広範囲な知識と経験、手腕を問われることになるだろう。
■「BizDev(ビズデブ)」が求められる2つの理由
「BizDev(ビズデブ)」という職種は、現在スタートアップや外資系企業で募集が多い。しかし今後は大手企業をはじめ、中堅中小企業でも「BizDev(ビズデブ)」のニーズは高まるに違いない。
理由は以下の2つ。
・事業のライフサイクル短命化
・事業の新陳代謝の必要性
近年、事業のライフサイクルは急速に短くなっている。くしくも12日の日経新聞のトップは、日本の商用EV(電気自動車)部門に中国メーカー進出という記事であった。世界的な脱炭素の潮流を受け、日本の物流大手がEVシフトに動いている。にもかかわらず日本の自動車メーカーの取組みが遅れており、中国メーカーに日本進出を許した。
内燃エンジン車の事業はもう先が見えている。日本の自動車メーカーは事業の新陳代謝をはからなければならず、早期退職制度に2000人が殺到したホンダの例からもわかるだろう。事業も技術者も入れ替わっていかなければ企業は生き残っていかない。
大手企業のみならず、中小企業も同様だ。いつまでも従来の事業に依存していては未来がない。しかし事業開発は一発で成功することはほぼなく、どんなに周到な準備をしても失敗するもの。したがって既存の事業が成功しているうちに、新たな事業開発を模索していかなければならない。
優秀な「BizDev(ビズデブ)」を採用したいなら、その点は考慮すべきだ。必要に迫られてから募集しても、優秀な人材からは興味を持ってもらえないだろう。事業開発が成功するかどうかは、企業の経営体質に強く影響を受けるからだ。
■「BizDev(ビズデブ)」に必要な3つのスキル
さて「BizDev(ビズデブ)」を採用するなら、どのような人材がよいのか。必要なスキル(というか要件)について考えてみたい。私の考えは以下の3つだ。
1)強いマインド
2)経営者目線
3)水平思考
※以下の動画でも詳しく解説
まず第一に、強靭な精神力。強いマインドが不可欠だ。飛行機がテイクオフする様子をイメージすればいい。あの巨体が宙に浮き、上空1万メートルに達するのに必要なエネルギーである。相当量の馬力がないと、新事業を軌道に乗せることなどできない。
第二に、経営者目線。事業アライアンス、M&Aを直接的に主導できなくとも、目線は経営者のそれか、それ以上でなければならない。つまり経営者に助言できるぐらいの視座の高さが不可欠で、それぐらいの知識と経験ぐらいは求められるだろう。
第三に、水平思考。イノベーティブ・シンキングとでも言おうか。過去の延長線上でものを考えるのではなく、新しい発想を導きだすことができるか。アイデア力も重要だ。「過去にそんなプロモーションを実施したことがない」とか「従来そのような異業種とアライアンスを組んだことがない」といった声にもひるまない覚悟も必要だ。
マッキンゼーの試算によれば、2030年までの日本では1600万人が職を失い、1000万人が新たな職に就くという。数字の正確性はともかく、世界中で「産業シフト」が起こることは確実。
これからはスタートアップや外資系企業のみならず、大企業から中小企業にいたるまで、事業開発――「BizDev(ビズデブ)」という人材は、広く求められることになるだろう。