天の川銀河すぐ隣で「未知の銀河」を新発見!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「小マゼラン雲の新事実、後方に銀河が潜んでいた!?」というテーマで動画をお送りします。
天の川銀河から16万~20万光年ほど離れたすぐ隣に、大マゼラン雲と小マゼラン雲という2つの矮小銀河が存在しています。
これらの天体は北半球に住む私たちにはあまり身近に感じられないかもしれませんが、南半球では肉眼ではっきりとこれらの銀河の存在を確認することができます。
そんなマゼラン雲のうち、普段話題になることが多いのは大マゼラン雲の方ですが、今回は「小マゼラン雲」のお話です。
なんとこの銀河の背後に、もう一つ未知の銀河が潜んでいる可能性が高いことが示されました。
●小マゼラン雲
小マゼラン雲は、地球から約20万光年彼方にある矮小銀河です。
諸説ありますが一般的には、その近くにある大マゼラン雲と共に天の川銀河を公転する、「伴銀河」の1つであると考えられています。
そして小マゼラン雲は、研究対象としても非常に魅力的で、これまでも盛んな研究が行われてきた天体です。
その理由としてはまず天の川銀河と距離が近く、個々の星や星間物質まで詳細に調べることができることが挙げられます。
また、銀河に含まれる重元素の量が少ないという特徴があります。
重元素は恒星の内部で形成されるので、恒星がまだあまり誕生したことがない宇宙初期には、重元素があまり存在していませんでした。
よって重元素の量が少ない小マゼラン雲は、初期宇宙に存在していた銀河と性質が近く、小マゼラン雲の研究自体が、間接的に初期宇宙の銀河の理解に繋がるという点も、研究対象としての魅力です。
そして小マゼラン雲は、謎多き天体でもあります。小マゼラン雲内のガスや恒星の運動の様子が非常に複雑で、単純な銀河のモデルでは説明できないのです。
大マゼラン雲からの重力的な作用によって破壊されているという説がありますが、
これらの謎を説明できる、SMCの性質を表した明確なモデルが求められてきました。
●小マゼラン雲の背後にもう一つ銀河があった!?
そんな中2023年12月、小マゼラン雲が実は異なる進化を辿った2つの銀河が重なって存在している可能性を高める研究成果が発表され、大きな話題を呼んでいます。
研究チームはまず小マゼラン雲内に存在する大質量星から地球にやってきた光を分析し、地球までの経路上に存在する星間物質による減光(星間減光)の度合いを求めました。
これにより、大質量星までの距離を特定できます。
つまり星間減光の度合いが大きければ、その前に多くの塵が存在し、恒星はより遠くにあると言えます。
逆に星間減光度合いが小さければ塵が前方に少なく、恒星がより近い位置にあると言えます。
さらに、「生まれたばかりの大質量星は、それが生まれたガス雲のすぐそばにあり、移動速度が似ている」という一般的な仮定のもと、大質量星とガス雲の移動速度を比較し、同じ領域に存在する星とガスを紐づけました。
これにより恒星だけでなくガス雲を含めた、小マゼラン雲内の領域ごとの距離を理解できます。
研究の結果、小マゼラン雲内に顕著に異なる性質を持つ2つの領域が存在している様子が浮かび上がりました。
具体的にこれらの持つ異なる性質としては、まず距離が挙げられます。
地球に近い方の領域は地球から約19.9万光年、遠い方の領域は約21.5万光年離れており、お互いが16000光年離れていることになります。
さらに運動の仕方も異なり、地球に近い方の領域が遠い方の領域よりも速く動いていました。
そして化学組成も異なり、近い方が遠い方より重元素の量が多く、分子雲も多く存在していました。
これらの結果から、小マゼラン雲は実は単一の銀河ではなく、2つの銀河が視線の方向に重なって存在している可能性が高いと言えます。
これらの銀河は似た質量を持っており、どちらも大マゼラン雲からの強い重力を受けていると見られます。
仮に今回の研究結果が事実であれば、小マゼラン雲の奥に新たな銀河が出現し、
さらに大マゼラン雲を含めたマゼラン雲が三つ子になることになります。
ただし、小マゼラン雲の2つの銀河がもともと全く別の銀河で、偶然接近したものなのか、もしくは最初は1つの銀河だったのが大マゼラン雲のようなより大きな銀河との相互作用で引きはがされ、分裂したものなのか、その進化の歴史については
疑問が残っています。
より正確なことを知るために、追加の詳細な研究が必要であるとのことです。