大阪桐蔭センバツ連覇! 史上3校目の偉業
90回の節目の大会にふさわしく、春夏優勝3回、甲子園通算61勝の智弁和歌山と、優勝6回で通算56勝の大阪桐蔭という豪華な顔合わせとなった決勝は、昨春の近畿大会、夏の甲子園、秋の近畿大会と3回続けて公式戦で当たっている(大阪桐蔭の3連勝)両校の意地のぶつかり合いでもあった。
「大阪桐蔭に勝ちたい」一心で決勝へ
智弁和歌山の高嶋仁監督(71)は決戦前、「組み合わせが決まった段階で大阪桐蔭と当たるとすれば決勝までない。『そこまで負けるな』と言ったけど、よくここまで来た」としみじみ話した。選手たちも異口同音に「大阪桐蔭に勝ちたい。優勝するより勝ちたい」と話す選手もいたほどだ。それくらい、「打倒 大阪桐蔭」に懸ける思いは強かった。春の近畿大会はともかく、夏の甲子園は現チームのエース平田龍輝(3年)が、先輩投手を救援し、暴投で決勝点を与えて1点差で敗れている。秋の近畿大会は決勝で当たって、桐蔭の根尾昂(3年)の本塁打による1-0という僅差で惜敗していた。
智弁先発の池田が好投
試合は意外な立ち上がりとなった。
智弁先発の池田陽佑(2年)は前日の東海大相模(神奈川)との準決勝で初回、ワンアウトすら取れずに降板していた。しかしこの日は別人のような投球。丹念に低目をついて桐蔭打線に好機を与えず、五分五分の序盤戦を演出した。そして先に好機を迎えたのは智弁。相手失策などから4回表、無死満塁とするが、桐蔭先発の根尾も簡単には崩れない。投ゴロ併殺で2死となったところで、8番・東妻純平(2年)が根尾の決め球のスライダーをとらえ、三遊間を突破して2点を奪った。球場内がざわつき始める。一方の桐蔭も簡単には引き下がらない。すかさずその裏、無死満塁から、併殺を焦った智弁守備陣の乱れなどに乗じ、すぐに追いついた。手の内を知り尽くしている両雄が、一歩も譲らぬ展開。決勝にふさわしい熱戦だ。
「終盤に強いチームに」西谷監督
池田はよく投げたが、7回の先頭打者に四球を与えたところで、高嶋監督はエースの平田をマウンドに送った。「終盤、7回以降に強いチームになろう」を合言葉にしているという西谷浩一監督(48)がここで仕掛ける。犠打で二進させて1番の宮崎仁斗(3年)が打席に入ると二塁走者を動かした。宮崎はしぶとく遊撃手の頭上へライナーを放ち、あっという間に勝ち越し点を奪った。投手の代わり端、同点の終盤でも慎重にはならず、積極的に仕掛けるのは今大会の桐蔭の特徴だ。前日の三重戦では、9回1点ビハインドの場面でも仕掛けていた。「ウチも苦しかったが相手も苦しい場面。仕掛けたら守りのミスも出る。普段から一番やっている練習」と指揮官はどんどん選手を動かした。
根尾は早くも夏へ思い
これで楽になった桐蔭は、8回に中軸が連打を浴びせて決定的な2点を追加し、3点差で根尾が完投を懸けて最終回のマウンドに上がった。
「初回から飛ばす。最後のマウンドにいられるかどうかはあとづけ」と話していたが、救援を仰ぐこともなく140球を投げ切った。優勝の瞬間を2年連続、マウンドで迎えたのは根尾が史上初めて。それでもクレバーな根尾は、「素晴らしいところで投げさせてもらい、貴重な経験ができた。(優勝の)マウンドでしか経験できないことを、今後の試合に生かしていきたい」と早くも夏の甲子園へ思いを馳せる。「去年は先輩に優勝させてもらった。開会式で優勝盃を返したとき、また手にしたいと強く思った」という。場内一周の列で、根尾はその重みを実感したに違いない(=タイトル写真 前から二人目が根尾)。
夏への戦いは始まっている
夏の100回大会は史上最多の56校出場が確定し、センバツとは比べものにならないくらい厳しい戦いが待っている。2代表の大阪でも、最大のライバル履正社と同じブロックになり、予選からまったく息が抜けない。智弁和歌山の高嶋監督は、「選手たちには、夏が終わってから『よくやった』と言う」と、悔しさをにじませた。大阪桐蔭が重圧に打ち勝って、再び春の頂点に立てたのも、昨夏の悪夢の敗戦があったからだ。勝ち続けることの難しさは大阪桐蔭が一番よく知っている。長い夏への戦いはもう始まっている。