エンジェルスが強くなれない理由は、オーナーの「偏愛」にあり!?
ロサンゼルス・エンジェルスは、今年もポストシーズンへ進めなかった。最後の進出は、2014年まで遡る。7年間の「空白」は、継続中ではデトロイト・タイガースと並び、シアトル・マリナーズの20年間とフィラデルフィア・フィリーズの10年間に次ぐ。
その理由の一つは、オーナーのアルトゥーロ・モレノにあるのではないだろうか。
モレノがウォルト・ディズニー社からエンジェルスを購入した2003年4月以降、総額9000万ドル以上の契約を手にした選手は、メジャーリーグ全体で延べ98人を数える。そのうち、エンジェルスが契約を交わしたのは7人だ。この人数は、最多のニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスより1人少なく、ロサンゼルス・ドジャース、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ワシントン・ナショナルズ、ニューヨーク・メッツ、フィリーズ、タイガースより1人多い。
ここに、5人のシカゴ・カブスを加えた10球団中、投手と9000万ドル以上の契約を交わしていないのは、エンジェルスだけだ。他の9球団は、そのなかに少なくとも2人の投手――延べではなく別々の投手――を含んでいる。
この間に、エンジェルスのGMは、ビル・ストーンマン、トニー・リーギンス、ジェリー・ディポート、ストーンマン、ビリー・エプラー、ペリー・ミナシアンと交代してきた。9000万ドル以上の契約がいずれも野手というのは、オーナーの意向が強く働いている可能性が高い。
2004年以降の18年間を6年ごとのスパンに区切ると、エンジェルスのポストシーズン進出は、2004~09年が5度、2010~15年が1度、2016~21年はゼロとなる。エンジェルスの先発投手陣が記録したシーズン防御率のリーグ順位は、2004~09年が平均3.2位(1~5位)、2010~15年が平均5.7位(2~11位)、2016~21年は平均10.5位(6~15位)だ。今シーズンは、10位だった。
もちろん、エンジェルスが投手に金を投じてこなかったわけではない。例えば、2012~15年のローテーションには、総額7500万ドル以上の契約を交わした2人が並んだ。2011年の夏に生え抜きのジェレッド・ウィーバーと5年8500万ドルの延長契約を交わし、その数ヵ月後にFAのC.J.ウィルソンを5年7750万ドルで迎え入れた。また、2019年のオフは、FA市場に出ていた2投手、ゲリット・コールとスティーブン・ストラスバーグのどちらにも、食指触手を伸ばしていた。
だが、エンジェルスが投手に投じてきた金額は、野手に対するそれと比べると、多いとは言えない。コールとストラスバーグについても、提示した金額(あるいは他の条件)が十分ではなかったのかもしれない。コールは9年3億2400万ドルでヤンキースに入団し、ストラスバーグはナショナルズと7年2億4500万ドルの再契約を交わした。一方、エンジェルスは、ストラスバーグの再契約が決まった直後に、ストラスバーグとチームメイトだったアンソニー・レンドーンと契約を交わした。レンドーンの年数と総額は、ストラスバーグが得たのとまったく同じだ。
今オフのFA市場には、マックス・シャーザー(ドジャース)、ロビー・レイ(トロント・ブルージェイズ)、ケビン・ゴーズマン(ジャイアンツ)、マーカス・ストローマン(メッツ)、カルロス・ロドーン(シカゴ・ホワイトソックス)、ノア・シンダーガード(メッツ)、エデュアルド・ロドリゲス(レッドソックス)、クレイトン・カーショウ(ドジャース)、ザック・グレインキー(ヒューストン・アストロズ)、ジャスティン・バーランダー(アストロズ)……といった先発投手が並ぶ。