「上原はワガママ」と叩かれてから15年…球団ごとに違うポスティング移籍容認に今こそ統一ルールを!
巨人のエース、菅野智之投手が正式にポスティングシステムの申請を行ったことを受け、早くもメジャー球団の関心の高さなどがメディアを賑わせている。
ポスティングシステムでのメジャー移籍については、今やほとんどの球団が容認し、ファンも背中を押す。巨人在籍時の2005年オフ、私がポスティングを訴えて球団から却下されたときは「上原はワガママだ」「自分勝手だ」と好き勝手に叩かれたのが懐かしい。笑い話ではない。当事者にとっては「時代が変わったのか・・・」と簡単に片づけられない話だ。
愚痴を言いたいわけではない。訴えたいのは、ポスティングシステムの「容認」について12球団統一のルールが必要だということだ。まずもって、ポスティングは球団に主導権がある。これは紛れもない事実で、現状では、選手がポスティングを認めてほしいと伝えても、球団が「NO」なら交渉は1分で終わる話だ。ソフトバンクはポスティングによる移籍を認めていないはずで、巨人も昨オフに初めて山口俊投手(現ブルージェイズ)に対して容認したが、私が訴えた当時は「NO」のスタンスだった。
ポスティングシステムは海外FA権(出場選手登録(一軍登録)日数が9年)取得前にメジャーに移籍できる制度だ。日本の球団は選手をFA前に手放す対価として、移籍先のメジャー球団から譲渡金を受け取ることができる。端的に言えば、ポスティングを容認している球団は、ドラフト会議で獲得した選手で「ビジネス」をして、譲渡金は補強などにも回すことができる。ソフトバンクや最近までの巨人がポスティングシステムを認めていないのは、球団に豊富な資金があり、リーグ優勝や日本一のための戦力を移籍させたくないという思惑からだと思う。
つまり、ポスティングを認めている球団は選手の夢を後押ししているかもしれないが、認めていない球団も他球団より高い年俸を払うなどして選手を大切にしているという点は忘れてはならない。
とはいえ、選手からすれば入団先はドラフトで決まる。所属した球団によってポスティング容認の有無が分かれるのは「公平」ではない。本来なら、メジャー移籍を海外FAだけにするのがわかりやすいが、多くの球団はFA期間を短縮するよりは、ポスティングシステムによる選択肢を残したほうが得策と考えるだろう。
その中で、「不公平」を解消できる「統一ルール」として、海外FA権が取得できる9年より1年早い8シーズンを終えた段階で、選手がポスティングによる移籍を訴えれば、球団は必ず容認しなければならないと規定すればどうだろうか。ポスティングを容認する球団も現状では海外FA権を念頭に1年程度前に容認するケースが多いように思う。「選手にタダで移籍されるくらいなら、1年早くメジャー挑戦を認めて譲渡金を受け取ったほうがベター」という考えがあるからだろう。
入団から8年でメジャーに挑戦できれば、大学出身の選手でも30歳でメジャーに行くチャンスが生まれる。メジャーで5、6年プレーした後、再び日本でプレーする時間も残される。そうなれば、メジャーの経験を生かしたプレーを日本球界に「還元」できる。
現状では、ポスティングが認められた選手でも、移籍の1、2年前から「メジャー志向」を公言し、オフの契約更改時に球団に〝下交渉〟したりしなければならない。8シーズンでポスティングを認めるというルールがあれば、わざわざ、メジャー志向があることを、何年も前から所属球団のファンに表明することもなく、8年プレーした後のタイミングで決断すればいい。ポスティングに否定的な球団は、複数年契約などを打診するなど、残留のために先手を打つ対抗策を練ることもできるだろう。
いずれにしろ、球団によって、あるいは同じ球団でも「この選手は認めるけど、この選手には認めない」などということを球団主導で判断できる現状の制度は統一されたルールではないと思っている。ほとんどの選手にポスティングが認められる時代になったからこそ、よりわかりやすい統一ルールがあっていいと考えている。