台風2号が発達中 地球温暖化が進んだ時の台風は
台風2号の発達
令和3年(2021年)4月14日3時にカロリン諸島で発生した台風2号は、西よりに進みながら発達し、4月17日21時にはフィリピンの東海上で「非常に強い台風」にまで発達する見込です(図1)。
台風の発生・発達の目安とされる海面水温が27度以上の暖かい海域を進むからです。
気象庁は台風のおおよその勢力を示す目安として、最大風速をもとに台風の「強さ」を表現しています(表)。
過去3年間で、「非常に強い台風」と「猛烈な台風」は合計25個と、全台風81個の約30パーセントを占めていますが、ここに台風2号が入ってくる予報です。
気象庁発表の台風情報から、予想中心気圧を記入すると、進路を北西に変える4月16日頃から急速に発達します。
そして、4月17日21時には中心気圧が950ヘクトパスカルの「非常に強い台風」となり、その後、925ヘクトパスカルの「非常に強い台風」に発達する予報です(図2)。
最強の「猛烈な台風」になるまで発達するかもしれません。
地球温暖化が進んだ時の台風
台風のエネルギー源は水蒸気が凝結した時に放出される熱ですので、台風は水蒸気が豊富な熱帯の海上で発生・発達します。
これから本格化する地球温暖化の影響で気温や海水温が上昇すると海水の蒸発量が増え、大気中の水蒸気が増えると、台風が発達することが予想されますが、単純ではありません。
地球大気の複雑な動きや変化が関係しますので、これらを加味しないと地球温暖化が進んだ場合の台風について予測できません。
気象庁にある気象研究所の最新の研究によると、地球温暖化が進むと台風の存在数が増える海域と減る海域が現れますが、トータルすると台風が存在する頻度は減る予想です(図3)。
しかし、猛烈な台風の頻度は減りません。
日本近海では台風の存在数は減りますが、猛烈な台風の存在数は日本の南海上を中心に増えています(図4)。
これは、勢力の弱い台風の襲来は減っても、暴風を伴った強い勢力の台風襲来が増えることを意味します。
日本付近の海面水温が高くなることで、熱帯期で猛烈に発達した台風があまり衰えることなく北上するからです。
また、台風の進行速度も変化します。高緯度で台風を動かす偏西風の位置が温暖化によって北上することから、北緯30度以北の台風の進行速度が遅くなります。このため、日本付近の台風でいえば、移動速度が約10%減速します(図5)。
同じ強さの台風でも、速度が遅くなると降雨時間が長くなりますので、大雨が降って大災害の可能性が高まります。
台風の移動速度が遅いということは、それだけで危険な台風です。
このように、地球温暖化が進むと、日本に接近する台風は少なくなっても、台風が接近した場合は大きな災害をもたらす可能性があります。
台風接近が予想されているときは、今まで以上の警戒が必要となります。
精度が上がっている台風の進路予報
図6は、台風の進路予報の年平均誤差の推移をみたものです。
令和2年(2020年)の3日先までの予報誤差は、前年とほぼ同じ値ですが、4日先・5日先までの予報誤差は小さくなっています。
大きく見ると、どの時間帯の予報も精度が年々向上しています。
予報円表示が始まった昭和56年では、24時間予報の進路予報誤差が200km以上ありましたが、いまでは、3日先の進路予報誤差と同じです。
地球温暖化により、大きな台風災害が増える可能性がありますが、防災対策を正確になった台風進路予報をもとに早めに行うことが必要になってきます。
タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。
図3、図4、図5、図6の出典:気象庁ホームページ。
図2、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。