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豊島九段、名人挑戦決めるか、プレーオフか――第82期順位戦A級最終9回戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
ここまで6勝2敗で順位戦A級首位の豊島将之九段(筆者撮影)

 藤井聡太名人(21)=八冠への挑戦権を争う第82期順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)A級は2月29日、静岡県静岡市「浮月楼」で最終9回戦が一斉に行われる。挑戦権争いは同星の場合プレーオフとなり、同星が3人以上だとパラマス方式(順位下位からの勝ち抜き)で行われる。

 残留争いもし烈だが、本稿では挑戦権争いを中心に見ていく。

「順位一枚の重み」を感じさせる混戦

 現在6勝2敗でトップの豊島将之九段(33)は5勝3敗の菅井竜也八段(31)と対戦。豊島九段が勝てば挑戦、菅井八段が勝てばプレーオフとなる。もう一人プレーオフ進出の可能性がある5勝3敗の永瀬拓矢九段(31)は4勝4敗の中村太地八段(35)と対戦する。永瀬九段が勝ち、菅井八段も勝った場合パラマス方式の3者プレーオフとなり、永瀬九段-菅井八段戦の勝者が順位上の豊島九段と対局し、その勝者が挑戦権を獲得する。

 対戦成績と最近の調子を基に挑戦権の行方を予想してみた。

<順位戦A級成績>(丸数字は現時点の成績順。段位のあとの数字はリーグ順位)

①豊島将之九段(3)6勝2敗

②永瀬拓矢九段(4)5勝3敗

③菅井竜也八段(6)5勝3敗

④渡辺明九段(1)4勝4敗

⑤佐藤天彦九段(8)4勝4敗

⑥中村太地八段(10)4勝4敗

⑦広瀬章人九段(2)3勝5敗

⑧斎藤慎太郎八段(5)3勝5敗

⑨稲葉陽八段(7)3勝5敗

⑩佐々木勇気八段(9)3勝5敗

<9回戦挑戦権争いの対戦カードと直接対決成績>※成績順・カッコ内は先後

豊島九段10勝-菅井八段(先)11勝

永瀬九段(先)4勝-中村八段3勝

菅井八段は穴熊で勝負か

 豊島九段-菅井八段戦は先手の菅井八段が結果の出ている中飛車か三間飛車を選ぶ可能性が高い。豊島九段の振り飛車対策は持久戦が多いので、菅井八段は得意の穴熊に囲って長期戦に進みそうだ。

 直近10局の成績は豊島九段3勝7敗(5連敗中)、菅井八段2勝8敗とどちらも白星が伸びず不調のため勝敗予想は難しく互角と見る。

 永瀬九段-中村八段戦は先手永瀬九段の角換わりが本命で対抗は矢倉。ただし後手の中村八段が横歩取りや相居飛車の力戦型に誘導する可能性はありそうだ。

 直近10局は永瀬九段8勝2敗、中村八段4勝6敗、調子で上回る永瀬九段がやや優位か。

 最後に残留争い(B級1組へ降級2名)の状況について少しだけ解説する。4勝4敗でも残留が確定しているのは渡辺九段のみで、順位が下の佐藤九段以下の全員に陥落の可能性があり、順位10位の佐々木八段以外は自身が勝てば残留という、かつてない大混戦だ。

 挑戦権の行方と残留者が決まるのは2月29日深夜。「将棋界の一番長い日」は最後まで目の離せない一日となるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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