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日本代表はベトナムに苦戦する!?“第2の日韓戦”と注目する韓国メディアと“パク・ハンソ マジック”

金明昱スポーツライター
ベトナム代表の熱狂的なサポーター。ボディペイントにはパク・ハンソ監督の姿も(写真:ロイター/アフロ)

 サッカーアジアカップも決勝トーナメント1回戦を勝ち上がった8チームが決定した。

 24日に行われる日本代表の準々決勝の相手はベトナム代表だ。ベトナム国内、さらに韓国内でもかなり話題になっている。

 東南アジア王者でもあるベトナム代表は近年、アンダー世代を中心にメキメキと力をつけているチーム。

 アジアカップメンバーの平均年齢は23歳と、出場国中で最も若く、グループリーグは1勝2敗で決勝トーナメントに進出し、ベスト16ではヨルダンを1-1の引き分けからPK戦で撃破した。

パク・ハンソ監督という人物

 そんな快進撃に注目した韓国メディアには、こんな見出しが躍る。

「日本VSベトナム、第2の韓日戦になるか? 期待される“パク・ハンソ マジック”」(経済紙「ソウル経済」)

「大会唯一の韓国の指導者、パク・ハンソは誰よりも日本に勝利したい」(スポーツ紙「スポーツ朝鮮」)

 そう、これだけ韓国メディアが注目するのは、ベトナム代表の快進撃を率いるのが韓国人のパク・ハンソ監督だからだ。

 ベトナム代表を戦える集団にした手腕が高く評価され、ベトナムでは絶大な人気を誇る。今や“英雄”扱いで、韓国内では彼の采配を“パク・ハンソ マジック”と表現するようになった。

 そもそも、パク・ハンソ監督はどのような人物なのか。

 現役時代はKリーグ、韓国代表としてもプレー。選手生活から退いたあと、国内クラブの慶南FC、全南ドラゴンズ、尚武尚州などで監督を歴任。韓国代表コーチやU-23韓国代表監督なども務めた。

 2017年10月にベトナムサッカー連盟とA代表監督の契約を交わし、U-23代表監督も兼任することが決まったわけだが、彼の指導者人生はここから絶頂期を迎える。

ベトナム代表を指揮するパク・ハンソ監督(写真:ロイター/アフロ)
ベトナム代表を指揮するパク・ハンソ監督(写真:ロイター/アフロ)

“ベトナムの中村俊輔”!?

 彼のハイライトは2018年1月に開催されたAFCU-23選手権だ。

 パク・ハンソ監督率いるベトナムは、グループリーグ初戦で韓国に敗れたものの、第2戦目のオーストラリアを1-0で下し、第3戦のシリアに0-0で引き分けて、勝ち点4でグループ2位。8チームによる決勝トーナメントに進出した。

 準々決勝では強豪イラクを相手に3-3のドローからPK戦で勝利。続く準決勝でもカタールに2-2で引き分け、PKで劇的勝利を収めて、決勝へ進出した。

 決勝ではウズベキスタンに2-1で惜しくも準優勝となったが、アジアの勢力図が変わりつつあるのを予感させてくれる大会だった。

 また、同大会で5得点をあげた21歳のMFグエン・クアン・ハイは、アジアカップの主力。

 さらに昨年12月のスズキカップを制し、大会MVPにも輝いている。左足から精度の高いFKを得意としており、“ベトナムの中村俊輔”と言ったところだろうか。日本にとっては警戒すべき選手に間違いない。

日本代表に挑むベトナム代表イレブン(写真:ロイター/アフロ)
日本代表に挑むベトナム代表イレブン(写真:ロイター/アフロ)

ベトナム総理大臣が監督に祝電送る

 さらに最近の日本にとっても、ベトナムは因縁の相手だということを忘れてはならない。

 記憶に新しいのは、昨年8月のジャカルタ・アジア大会だ。

 男子サッカーでD組の森保一監督率いる日本代表(U-21)は、初戦のネパールに1-0、2戦目のパキスタンに4-0で2連勝し、勝ち点6で同組2位以上が確定した。

 一方のベトナムも初戦のパキスタンに3-0、ネパールに2-0で勝利して2連勝し、勝ち点6。得失点差も同じで、グループ1位で日本と並んだ。

 共に1試合を残して決勝トーナメント進出を決めたが、グループリーグ最終戦の直接対決で日本はベトナムと対戦し、0-1で敗れた。

 それもエースのMFグエン・クアン・ハイに得点を許している。

 最終的にアジア大会は日本が準優勝し、ベトナムは4位に終わったがメダル獲得まであと一歩と迫った。ベトナムの若き選手たちの力をあなどってはいけないことを思い知らされた一戦だった。

 アジア大会での快進撃の際には、ベトナムの総理大臣が「政府に代わり代表チーム、特にパク・ハンソ監督にお祝いの言葉を贈りたい」と祝電を送ったほどだ。

「日本代表には勝ちたい」

 前出の「スポーツ朝鮮」の記事にはこんなことが書かれていた。

「かつてパク監督の現役時代、日本はライバルだった。だから誰よりも日本に勝利したいと思っている。ただ、客観的な戦力ではベトナムは厳しい戦いを強いられるだろう。ベトナムに勢いはあるが、すべての面で日本に押されている。ただ、ベトナムが信じているのは“パク・ハンソ マジック”だ」

 ベトナムは守備重視からのカウンター攻撃が基本的な戦い方だが、一度、日本を破ったときのように運動量の落ちないスタミナをベースに、勝負所では最終ラインを上げて果敢に攻めてくるだろう。

 パク・ハンソ監督の采配が、森保ジャパンをどれだけ苦しめることができるのかも見ものだが、日本はそう簡単に勝てる相手ではない。

 ただ、格下と舐めてかかると手痛い結果になるかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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