「うる星やつら」「るろ剣」「スラムダンク」 かつての名作がアニメで続々復活 なぜ?
「うる星やつら」(10月放送開始)や、「スラムダンク」(12月公開)、「ベルサイユのばら」(公開時期未定)、「るろうに剣心」(来年放送予定)など、かつての名作がテレビアニメやアニメ映画で続々復活します。なぜでしょうか。
◇アニメはライバル作品多く
日本動画協会の報告書「アニメ産業レポート2021」によると、2020年に放送されたテレビアニメの作品数は278。前年の302から減少していますが、2013年から毎年250以上をキープ。ピーク時には350を超えていました。背景には海外での日本アニメの人気があります。
そして2020年のアニメ映画の作品数は66。前年の91から大きく減少しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で公開延期が相次いだため。それ以前は増加傾向にありました。そして「ONE PIECE FILM RED」や「シン・エヴァンゲリオン劇場版」などが興収100億円を突破。従来の「業界の常識」では考えられないような勢いがあります。
元々の人気作品が、SNSや報道などでさらに話題になってより人気を集め、“独り勝ち”するような傾向にあります。作品の出来の良さは大前提として、作品があふれる中、話題性を持たせたり、何かしらの注目を集められるかです。
◇「時代の流れ」に合致
アニメの作品数の多さを考えたとき、「かつての名作の復活」というのは、理にかなっています。最初から相応の認知度がありますし、SNSなどの話題になりやすいのです。また最新のアニメ制作技術によって、作品のパワーアップ感が出しやすいのも見逃せません。さらに、期間が開いているほど、声優のキャスティング変更もしやすくなります。旬の声優を起用すれば、そこでも人気が見込めます。
原作コンテンツ側の視点でも、再度のアニメ化で、原作マンガ・小説の売上アップが見込めます。そしてクリエーター視点でいうと、かつて自分たちがあこがれた作品を、自らの手で復活させられるのです。もちろんかつての名作を見た人たちが、アニメ業界に入って年数が経過し、企画を動かせるポジションに来たことと無縁ではありません。
ビジネス視点でも歓迎される素地があります。ファン層の数が計算できるためビジネスモデルの「見通し」が立ちやすく、企画を通しやすいことです。そもそも「三振かホームランか」という未知の作品と、高確率のヒットが見込めそうな既知の作品では、どうしても計算の立つ後者の評価が高くなる傾向にあります。
さらに言えば、アニメを見る側の消費者の行動も似たところがあります。存在するコンテンツをかたっぱしから見る昔ながらの試行錯誤的な手法は嫌がられ、無駄を省いて見るべき作品を効率よく……というコストパフォーマンス重視の流れにあります。名作の復活は、「外れを引きたくない」という意味で「時代の流れ」にも合致しているのです。
◇「ホームラン」を出せるか
ただし「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」「東京リベンジャーズ」「スパイファミリー」など、近年ホームランを飛ばした作品は、いずれも「かつての名作」ではありません。そもそも、かつての名作がアニメで復活したことは、これまで何度もありますが、前評判は良くとも「かつてと同じホームランが出る!」とは言い難いところです。
果たして「名作の復活もの」から、“社会現象”と言えるようなホームラン級が生まれるのでしょうか。「ルパン3世」と「キャッツ・アイ」が共演するアニメが発表されたように、オリジナル要素のある新企画も出てきました。大切なのは、さまざまな手法で挑戦を続けることです。
アニメ市場は、海外で右肩上がりです。「アニメ産業レポート2021」によると、消費者が支払った推計金額を算出した2020年の「アニメ産業市場」の規模は2兆4000億円超。うち海外市場は1兆2000億円を超え、2002年以降で初めて国内市場を上回りました。「ホームラン」を打つのは、海外でも良いのです。実際、日本では普通扱いされる作品が、海外での熱狂的な人気を受けて制作されることもあります。
また「名作の復活」で確実に稼ぎながら、別の「ホームラン狙い」の作品を作る作戦も考えられます。名作の復活には相応の利点があり、それらをフル活用することも大事です。そして今は停滞気味でも、完全新規のオリジナルものも大切です。知名度不足で火が付きにくいものの、爆発したときの利益が大きく、自らコントロールできるため多様な展開も容易というメリットがあります。良くないのは流行を追いすぎて、特定のジャンルに偏りすぎることです。
いずれにしても、「かつての名作」は、今後も制作側とファンの双方から注目されそうなのは、確かといえそうです。