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木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』入門 織田信長が次男に縁を切るといった深い事情

濱田浩一郎歴史家・作家

木村拓哉さん主演の映画『レジェンド&バタフライ』が公開されています。木村さんが演じるのは、誰もが知る戦国武将・織田信長。映画は、信長とその妻・濃姫(演・綾瀬はるかさん)との関係が濃密に描かれています。信長とその子供たちとの間柄については描写はされていませんが、実際には、様々なことがありました。

その1つが、天正7年(1579)9月、信長が次男の織田(北畠)信雄に激怒したことです(信雄は、伊勢国司・北畠家の養子となっていました)。では、なぜ信長は信雄に怒ったのでしょうか?

その間の事情については『信長公記』(信長の家臣・太田牛一が記した信長の一代記)に詳しく載っています。先ず、9月17日、信雄は伊賀国(三重県西部)に、信長に無断で出兵、負け戦となり、味方である柘植三郎左衛門らを討死させてしまいます。

これが、信長の逆鱗に触れ、9月下旬、信長は信雄に怒りの書状を送るのです。その書状の内容は次のようなものでした。

「今回、お前が伊賀国での戦において、落ち度があったことは、天罰というものであろう(伊賀攻めの際、信長は上方は伊丹に出陣中でした)。上方に出陣すれば、伊勢国の武士や民百姓が大いに困るので、お前はそれを避けるために、伊賀に侵攻したのか。お前は、若気の余り(信雄21歳)、勝手にそう思い込んで、出兵したのではないか。無念この上ない」

「お前が上方に出兵することは、第一は天下のためであり、父である私への奉公にもなること。また、兄・信忠(信長の後継者)を敬うことに繋がる。更に、お前の将来のためにもなろう。それなのに、大切な武将らを討死させたことは言語道断。お前がそのような心がけでいるのならば、親子の縁も認めるわけにはいかん」

信雄が勝手に伊賀に出兵したことに、信長は怒ってはいるのですが、書状からは、子を想う信長の感情も読み取ることができます。「親子の縁も認めるわけにはいかん」と言いつつも、改心すれば許すぞという気持ちも窺えるでしょう。信長は信雄を勘当していませんので、信雄は「申し訳ありません」と謝罪したと思われます。天正9年(1581)、信長は信雄を大将として、伊賀国に侵攻します(第二次天正伊賀の乱)。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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