「GoTo事務局の日当7万円」はミスリード。業務委託の人件費であり、働いてる人の実際の給料は半額ほど
「GoTo事務局の日当7万円」と10月19日に報じたテレビ朝日の記事がSNSで話題となり、「異常なまでに高い」、「ベーシックインカムと同額」、「税金の無駄遣いだ」と炎上しています。
たしかに「1日7万円が給料として貰える」のであれば高いと思いますが、このニュースはテレビ朝日と野党によるミスリードです。
「日当7万円」は最高額。テレビ朝日の煽り見出し
まず最初に『Twitter』のトレンドにもなった「日当7万円」ですが、これはテレビ朝日による煽り見出しです。
「日当7万円」が支払われるのは、職種としては最上位にあたる「システムプロジェクトマネージャー(5人)」と「事務局長・事務所長(59人)」です。金額は正確には69,800円です。
出向社員の人件費(日額)
- システムプロジェクトマネージャー:69,800円(5人)
- 事務局長・事務所長:69,800円(59人)
- 部長級:55,300円(213人)
- 課長級:48,700円(2,315人)
- 係長級:40,600円(2,522人)
- 係員級:32,700円(1,251人)
- 派遣・契約社員:27,900円(572人)
平均額は記事内にもあるとおり「約4万円」。
要するに一番高い人の「日当」を持ち出してきて高いように見せかける手法をテレビ朝日が使い、我々読者(視聴者)はまんまとそれに釣られているというわけです。
「日当」は「日給」ではない
続いてのミスリードというか、誤解を生んでいるのが「日当」という言葉です。
「日当7万円」に怒っている人の多くは、「この金額がそのまま働いている人に支払われる」と思っているような発言が見受けられます。
しかし、実際には「日当」ではなく「人件費」です。そして支払われる「人件費」には「基本給相当額」、「諸手当」、「賞与相当額」、「事業主負担額」がふくまれます(国土交通省資料「令和2年度 設計業務委託等技術者単価について」より)。
10月19日に開かれた野党合同国対ヒアリングでも、「ひとりあたり単価が約4万円は高すぎるのではないか?」という野党からの質問に対して、担当者の女性が「半額近くが実際の基本給にあたる部分なのではないかという風に考えておりますので、それほど高いものではないと思っています」と「半額が給与になる」と回答しています。
というわけでわかりやすいように「日当」の半額を月給に直した金額がこちらです。
出向社員の想定月給(数字は四捨五入)
- システムプロジェクトマネージャー:70万円(5人)
- 事務局長・事務所長:70万円(59人)
- 部長級:55万円(213人)
- 課長級:49万円(2,315人)
- 係長級:41万円(2,522人)
- 係員級:33万円(1,251人)
- 派遣・契約社員:28万円(572人)
GoToトラベル事務局に出向できるほどの能力の正社員であれば、この金額で「高すぎる」ということはないと思います。
課長や係長が多すぎる問題→名付けミス
続いての誤解は課長級(2,315人)、係長級(2,522人)という「課長や係長が多すぎる問題」です。
これは名前のマジックです。「課長級」の「級」に注目してください。
今回、論点となっている金額は国土交通省の「令和2年度 設計業務委託等技術者単価」をGoToトラベル業務用にそのまま当てはめたもので、そちらでは職種は「課長級」とは書かれていません。
設計業務委託等技術者単価
- 主任技術者:69,800円
- 主任技師:55,300円
- 技師(A):48,700円
- 技師(B):40,600円
- 技師(C):32,700円
- 技術員:27,900円
GoToトラベル事業には技師などいないため、代わりに「主任技師=部長級」「技師(A)=課長級」「技師(B)=係長級」「技師(C)=係員級」「技術員=派遣・契約社員」と名付けたことが「課長や係長が多すぎる問題」を生んだ原因です。
実際の課長や係長はあまりいないのではないかと思われます。あくまでも「級」。
本質は「出向社員は金額分働いているのか?」
この「GoToトラベル事務局に出向している社員の日当が高い」という指摘は、10月14日の週刊文春の記事が初報です。
こちらの記事では、「出向社員が働かずに日当をもらっている」との事務局関係者の証言が報じられています。
仕事をしていないのに日当を貰っているとなれば問題です。
野党は「日当が高すぎる」ではなく、「金額分の労働がされていない」可能性について追求するべきではないでしょうか?
「出向者に支払う人件費が高い」と言い続けても、労働者の賛同は得られないと思います。その行き着く先は給料の減少=1億総貧乏ですから。