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インド北部、大気汚染レベル深刻に この時期になぜ?

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
インド北部チャンディーガルの様子(15日撮影)(写真:ロイター/アフロ)

深刻な大気汚染

インドの首都ニューデリーでは、今月12日から大気の汚染レベルが非常に高い状態が続いています。政府の大気汚染モニターの値は、測定限度値である「999」に到達しました。政府はその対策のために17日(日)まで一切の建築工事を禁止、また消防隊には散水をするよう求めています。

夏には珍しい

この時期に、大気汚染が深刻なレベルに達するのは珍しいことです。

一般的に汚染シーズンと呼ばれるのは秋や冬です。この時期は風が弱まり、また放射冷却が起きて汚染物質が地表付近にたまりやすくなります。さらに野焼きや暖房使用の増加から、一層大気の状況が悪化するのです。昨年11月にはインド史上最悪の大気汚染が発生し、インドの高官が「まるでガス室のよう」と揶揄し、専門家が「たばこ50本を一日に吸うのと同じくらい有害」と指摘したほどでした。

今回の原因は…

では今回の大気汚染の原因は何でしょうか。

最大の原因は、ニューデリーの南西に位置するラジャスタン地方から流入している砂漠の砂です。今年ラジャスタンでは例年より乾燥・高温の日が続いており、しばしば砂嵐が発生しています。5月上旬には大規模な砂嵐が発生し、ニューデリーを含むインド北部で140人以上が亡くなる大災害が起きました。

このように砂嵐が多発していることに加え、12日からは風向きが南西に変わったことで、ラジャスタンからニューデリーに砂が飛来するようになりました。週末にかけて同じような風が吹くと予想されることから、深刻な状態はまだ数日の間続くと見込まれています。

変色するタージマハール

世界保健機関(WHO)は先月、世界で最も深刻な大気汚染が起きている上位15箇所のうち14の地点はインドで、ニューデリーは6番目と発表しました。

そのような中、ある問題が発生しています。

大気汚染物質などが原因で、ニューデリーから180キロの距離にある世界遺産のタージマハールの白壁が、茶色や緑色に変色しているというのです。インド政府はその対策のために、泥パックを使って汚れを取っています。人も建物も、汚れ落としには同じ方法を用いるようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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