「まるでガス室」ニューデリーの大気汚染は何が原因か
高官が「まるでガス室のよう」と揶揄し、専門家が「たばこ50本を一日に吸うのと同じくらい有害」と指摘するほど、インド・ニューデリーで起きている今秋の大気汚染は深刻なものとなっています。
どれほどひどいのでしょうか。
AQI 999
大気汚染の程度を表す「大気質指数(AQI)」という指標があります。数値は0から500で、100以下であれば健康に影響が及ばないのですが、301以上になると「危険レベル」となり、全ての人が屋外活動を中止する必要があるとされています。
このようにAQIの最大値は500ですが、7日ニューデリーでは999に達していました。搬送される患者数が2割増加したほか、視界不良のため玉突き事故が発生、さらにユナイテッド航空も一時運航を取りやめました。
ハーフマラソン開催も…
健康に害が出る恐れから一時は中止されていたニューデリーのハーフマラソンでしたが、19日(日)には一転決行となり、大会史上最多となる3万4千人が参加しました。
大気の状態は以前よりは回復していたものの、「健康に良くない」レベルで大会は進行し、多くのランナーがマスクを着用して参加しました。しかし努力の甲斐もむなしく、目がちかちかしたとか、頭痛がしたと訴える人も多かったようです。
スモッグの原因
秋はインド北部でスモッグが頻繁に発生するために「スモッグシーズン」と言われています。その原因には下記の5つが挙げられます。
1. 煙の主な原因はニューデリー周辺の農業地域で行われている野焼きです。農村ではこの時期、米の収穫後に残った藁を急ピッチで焼却し、冬に向けて麦栽培の準備を始めます。
2. この周辺部からの煙に加えて、車や工場などから出る排ガス等が組み合わさり、一層空気の状態が悪化しています。
3. またニューデリーは盆地にあって、もともと空気が留まりやすい地形であることに加え、
4. 今の時期は雨が降らず風が弱いこと、
5. さらに朝晩の低温で冷たい空気が地面付近に溜まりやすく、汚染された空気が地面付近に留まりやすいのです。
それでは主原因である野焼きを禁じればいいと思うのですが、コスト的な問題と、支持層離れを懸念する政治家がなかなか規制に踏み切れないという、煮え切らない事情もあるようです。
WHO(世界保健機関)の発表によると、2015年にはインド国内で大気汚染が原因で亡くなった人数が250万人にも上り、世界ワースト1位であったとのことです。
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