シリア北部を占領するトルコ軍が何者かの砲撃を受け、兵士複数人が負傷
シリアのアレッポ県北西部、「オリーブの枝」地域と呼ばれるトルコの占領地が9月12日、砲撃を受け、トルコ軍兵士複数人が負傷した。
この地域に対する砲撃でトルコ軍側に負傷者が出るのはきわめて異例。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)やクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ニュース(ANHA)などによると、トルコ軍はこの日、「トルコの支援を受ける自由シリア軍」(Turkish-backed Free Syrian Army)として知られる国民軍とともに、PYDが主導する自治政体の北・東シリア自治局とシリア政府が共同統治下に置いているタッル・リフアト市近郊(北・東シリア自治局がいうところのシャフバー地区)のウカイバ村、ブルジュ・カース村などを砲撃、ブルジュ・カース村では複数の住民が負傷した。
トルコ軍と国民軍による砲撃は連日続いているが、これに対して、ガザーウィーヤ村に設置されているトルコ軍の拠点が砲撃を受け、トルコ軍の兵士複数人が負傷したというのだ。
英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団は、反撃は、北・東シリア自治局の武装部隊で、人民防衛隊(YPG)を主体とするシリア民主軍によるものだと発表した。
だが、反体制系サイトのEldorarは、複数の地元筋の話として、砲撃がヌッブル市とザフラー町に展開する「イランの民兵」によるものだと伝えた。
ヌッブル市とザフラー町は、シリア政府の支配下にあり、住民のほとんどがイスラーム教シーア派(12イマーム派)宗徒。シリア内戦を通じて反体制派の攻撃に晒され続けてきたが、イランの支援を受ける国防隊(親政権民兵)がこれを死守してきた。
誰がトルコ軍の拠点を狙ったかは明らかではないが、シリア人権監視団によると、砲撃と前後して所属不明の無人偵察機(ドローン)が飛来していたという。
なお、以下の地図からも明らかな通り、この地域は、シリア政府の支配地(赤)、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治地(黄)、トルコが占領する「オリーブの枝」地域(薄緑)、そしてシリアのアル=カーイダとして知られるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握るいわゆる「解放地」(緑)が入り組んでいる。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)