働き方改革時代の「新・残念な上司」とは?
■ サーバントリーダーシップ?
昨今「サーバントリーダーシップ」という言葉がもてはやされています。
部下に奉仕し、支援するスタイルをサーバント(支援型)リーダー、部下に強制するスタイルを支配型リーダーと呼ぶそうです。
たしかに、部下の自主性を発揮させ、支援する姿勢のサーバントリーダーのほうが、これからの時代に合っている気がします。ただ、私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタント。上司を見るうえで、もう少し別の尺度が必要だと考えています。
■ 働き方改革時代に求められる上司像
働き方改革時代となり、職場の生産性が極限まで求められるようになりました。
残業上限規制、有給休暇取得義務といった社会のルールが刷新され、超採用難で人材も以前のように増えない時代です。
以前とは比較にならないほど上司の手腕が問われるようになったと言えるでしょう。
ですから上司を評価する、もっとわかりやすい尺度が必要だと、私はよく思います。それは、「いないと困る上司」か、「いなくても困らない上司」か、という尺度です。
多くのクライアント企業に入って支援をしていると、「この上司はいなくても困らない」「この上司はいないほうがいい」と見分けられるようになりました。
働き方改革時代となり、それが、よりハッキリしてきたと実感しています。新しいタイプの「残念な上司」が、です。
■ いないと困る上司か?
私がクライアント企業に入り、「上司」と呼ばれる人を観察する場合、まず以下の3つに大別します。半年間もお付き合いをしていれば、ほぼ100%見極められます。
● いないと困る上司
● いなくても困らない上司
● いないほうがいい上司
では、これらの上司の見極め方を解説していきます。
まず「いないほうがいい上司」は簡単です。いるせいで、明らかに部下たちのパフォーマンスを落とす上司です。働き方改革時代ですから、部下の意欲のみならず、会議だの面談だのといって、部下の可処分時間を必要以上に奪う上司は、いないほうがいい。
難しいのは「いなくても困らない上司」の見極め方。
モノでも、あったらあったで使うけれど、なかったらなかったで問題ない、というモノがあります。友人の結婚披露宴でいただいた食器とか、マラソン大会に出場したときにもらった記念Tシャツとか。
しかし、ひとりの社員ではなく「上司」です。組織にとって「いたらいたでいい」という見られ方はいけません。あくまでも「いないと困る」という尺度で評価すべきでしょう。
ただ、「いないと困る」「いなくても困らない」の二択だとわかりづらいですから、次のように5つに細分してみます。
■ 5つに細分化する
細分化したのは、次の5つです。
●主食型上司
●主菜型上司
●副菜型上司
●薬型上司
●エナジードリンク型上司
まず「主食型上司」から解説しましょう。食事で表現すると主食。ご飯やパンに相当する上司です。この人がいないと仕事にならない、というぐらい重要な上司です。したがって当然「いないと困る上司」にあたります。とはいえ、組織において上司が主役では困りますから、理想の上司とは言い難いでしょう。
次の「主菜型上司」は、食事で表現すると肉や魚、卵などの主菜です。この上司がいないと仕事にならないというほどではないが、いないと組織の付加価値が明確に下がるという上司。この上司への依存率が高いのであれば、少しずつ依存率は下げたほうがいいでしょう。
「副菜型上司」も「いないと困る上司」です。たとえると副菜。主に野菜を利用した料理で、体にビタミンやミネラルを供給してくれます。いないとすぐ戦力が落ちるわけではないですが、長い目でみると次第に組織力が落ちていきます。このような上司の存在は大きいと言えるでしょう。理想の上司に近いと言えます。
「薬型上司」は、その名のとおり薬のような存在。いなくても困らないが、何かあったときに頼りになる上司を指します。ですから「いなくても困らない上司」です。そもそも「何かあったとき」というのは、年間どれぐらい発生するのでしょう。頻繁に起こるようなら組織力が低いケースです。相談役のような上司であれば正規雇用する必要がなく、顧問契約でいいでしょう。
「エナジードリンク型上司」は、いなくても困らないし、何かあったときも頼りにしなくてもいい上司です。エナジードリンクを飲んだら元気になりそうですが、おそらく気分だけ。過去の実績があるため、いないよりはいたほうがよさそうな上司はどこの組織にもいますが、たいていの場合は「気分」です。
■ 1年ほど不在だったら……
たまにでいいですから、部下の立場から、
「もしこの上司が何らかの事情で1年間不在になったら、組織はどうなるのか?」
を真剣に考えてみましょう。真剣に、考えるのです。
上司という立場なら、自分自身でも、
「もし私が何らかの事情で1年間不在になったら、組織はどうなるのか?」
を考えてみましょう。
1年ぐらい不在でも問題ないのでは? 仮にそのまま数年たち、部下が成長して、かえって今よりよくなるのでは?
と思えたら、「いなくても困らない上司」です。
■「いなくても困らない上司」はどうすればいいのか?
では、「いなくても困らない上司」は組織に居場所がないかというと、今のままならありません。ですから、「副菜型上司」を目指しましょう。
現場に出て、主役級の働きをしなくてもいい。
脇役に徹し、ビタミンやミネラルのように、組織の潤滑油として働けばいいのです。ベテラン社員だからこそできるはずです。そうしていけば、結果的にサーバント型(支援型)の上司に変身できます。
どうしても、脇役に徹することができない人、前のめりになってしまう人は、上司というアイデンティティを手放し、再び「主菜」や「副菜」を目指すのもいいと思います。
謙虚になり、組織の1プレイヤーとして活躍できるようになれば、当然、まだまだ居場所はあります。
働き方改革の時代となり、上司に求められることがずいぶんと変わってきました。「いなくても困らない」と言われるような、残念な上司にならないよう、常に自己研鑽に励み、謙虚な姿勢で自分を見つめ続けることが大事ですね。