謎の新型自爆ドローン「フェニックスゴースト」とは
ロシアの侵略に抵抗するウクライナに対し、アメリカは新たに155mm榴弾砲「M777」72門の供与と共に新型自爆ドローン「フェニックスゴースト(PhoenixGhost)」121機を供与すると発表しました。
この「フェニックスゴースト」は初めて聞く新兵器です。開発したAEVEXエアロスペース社は2017年設立の新しい会社で、これまで軍事用ドローンの納入実績はありません。「フェニックスゴースト」の形状はまだ公開されておらず、謎のままとなっています。アメリカ政府の説明はエアロヴァイロンメント社の自爆ドローン「スイッチブレード」によく似た機能の兵器だとありましたが、実際には大きく違う性能の兵器のようです。
フェニックスゴーストについて判明していること
- 中規模の装甲車両に有効な使い捨て型無人機
- 垂直離陸が可能
- 目標の探索と追跡で6時間超の飛行時間
- 赤外線センサーにより夜間運用が可能
各種自爆ドローン(徘徊型弾薬)の比較
- スイッチブレード300・・・滞空時間15分
- スイッチブレード600・・・滞空時間40分
- ハーピー(イスラエル)・・・滞空時間9時間
- ハロップ(イスラエル)・・・滞空時間9時間
- フェニックスゴースト・・・滞空時間6時間
フェニックスゴーストと他の自爆ドローンを滞空時間で比較すると、小型の部類になるスイッチブレードよりも大きなイスラエルIAI社製ハーピー/ハロップの方が近い存在になります。ただし発進システムで離陸補助ロケットを用いる大掛かりなハーピー/ハロップと異なり、フェニックスゴーストは自力で垂直離陸が可能という違いがあります。発進システムそのものが不要ということです。
つまり小さくて持ち運びやすいスイッチブレードの特徴と似たような性格を持ちながら、比較的大きなハーピー/ハロップに近い滞空時間を持つという、両方の良いとこ取りの自爆ドローンになります。
仮に離陸補助ロケットを用いず自力で垂直離陸が可能なら、前線に近くても隠密に発進が可能です。ただし自力で垂直離陸するならばペイロード(搭載物。センサー、爆発弾頭、燃料など)の面で不利になります。
フェニックスゴーストは滞空時間がそれなりに長いので、近くの前線に居る戦車よりも奥に布陣する榴弾砲や多連装ロケットなどを狙いに行く使い方になりそうです。
参考:マーティンUAV社の垂直離陸ドローン「V-BAT」
自力で垂直離陸しつつ数時間以上飛べるドローンでそれなりのペイロードのある機体として、マーティンUAV社の「V-BAT」が参考になります。ただしV-BATは再利用可能なドローンであり使い捨ての自爆型ではないので、自爆ドローンであるAEVEXエアロスペース社の「フェニックスゴースト」とは運用目的が異なる機体です。あくまで垂直離陸型としての参考用です。
- フェニックスゴースト・・・滞空時間6時間
- V-BAT(Martin UAV)・・・滞空時間8時間
- V-BAT128(Martin UAV)・・・滞空時間11時間