ファッション界の成功者とされたムーズ・オブ・ノルウェーが破産
ノルウェーのファッションブランドの代表であるムーズ・オブ・ノルウェー(Moods of Norway) が、破産したことが20日発表された。
ムーズ・オブ・ノルウェーは、ノルウェーにとって特別なブランドだ。2003年にスタートし、カラフルで個性的なデザインですぐさま知名度を広げた。
ピンク色の大きなトラクターを店内などに置き、ノルウェーの自然や田舎のイメージをデザインに取り込んで宣伝。
派手な色のスーツなどで登場する創設者のPeder Borresen氏とSimen Staalnacke氏は、現地では有名な人物だった。
シンプルでモノトーンなデザインが多いノルウェー。同ブランドは、派手な色合いの男性向けのファッションブランドの印象が強かったが、その後、路線を変更。ここ数年は経営が悪化していることが国内ではニュースとなっていた。商業的に売るために、日常的に着やすいシンプルなデザインの服が増加していた。
ノルウェー国営放送局NRKの報道によると、国内にある18店舗100人の従業員には破産の連絡がされた。
同ブランドは米国にも進出したが、経営は悪化。銀行がこれ以上の支援はできないという決断に至った。負債額は1億ノルウェークローネ以上と見積もられている。
ムーズ・オブ・ノルウェーは、これまでノルウェーの起業家たちの「お手本」とされてきた。ファッション文化があまり根付いていない国で、同ブランドほど個性的で、ノルウェーという国の良さを世界に上手に発信できた企業は少ないとされている。
起業家などに支援する政府も、産業大臣などが「見習ってほしい成功例」として、ムーズ・オブ・ノルウェーをあげることもあった。
ノルウェーでは新しいファッションブランドを成功させることが難しい。
国営放送局NRKのニュース番組は、「冒険は終わった」というタイトルで報道。「なぜスウェーデンやデンマークはファッションで成功しているのに、我々の国ではできないのか」と、司会者が口にするシーンもあった。
ノルウェーのファッション業界は、政治家が補助金を出して十分に支援しないから、成功できないと以前から主張している。
夢を叶えた起業家の成功例とされていたムーズ・オブ・ノルウェー。今回の出来事で、ノルウェーでファッションブランドを維持することの難しさが露呈した。
Photo&Text: Asaki Abumi