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アーセナルSS市川のTDに就任のリカルド氏。元日本代表GKコーチがサッカースクールを選んだ理由とは?

河治良幸スポーツジャーナリスト
代表GKコーチを2年間務めたリカルド氏。選手と一緒に動く指導が印象的だった。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

ハビエル・アギーレ前監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のもとで日本代表のGKコーチを務めた元スペイン代表のリカルド・ロペス氏がアーセナルSS(サッカースクール)市川のテクニカル・ディレクターに就任。1月12日に市川市内で会見を行った。

リカルド氏は現役時代にプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド、リーガ・エスパニョーラのレアル・バジャドリーやオサスナなど欧州トップリーグで活躍し、引退後はベルギーの名門クラブ・ブルッへでGKコーチを担うなど経験を積んだ後、14年7月にアギーレ前監督とともに来日。同氏が契約解除となり、ハリルホジッチ監督が就任してからも昨年7月までGKコーチとして代表チームに帯同した。

2年間の滞在で日本への愛着が強まったというリカルド氏だが、育成年代のサッカースクールで、しかもテクニカルディレクターに就任することに関しては、話を受けた時点で悩むことなく決断したそうだ。日本にいた2年間、忘れられない様な2年間でした。JFAにいたことで色んなサッカー関係者と知り合う機会ができた」と語るリカルド氏には「GKだけでなく、全体を見たい」という思いがあったという。

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アーセナル公認のスクールとして、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)というコンセプトをベースに創設されたアーセナルSS市川は人工芝の専用グラウンドをベースに、キッズからU-18まで300人を超える選手が在籍している。PFIを一言で説明すれば、公共施設等の建設・管理・運営について民間の資金・経営・技術を活用すること。その取りに組み関連して「Jリーグのクラブでも実現していない様なことをやりたい」と語るCEOの幸野健一氏はリカルド氏をスクールのクリニックに招いた時に、スクールの雰囲気が一変したことを招へいの大きな理由にあげる。

「何よりサッカーのパッション(情熱)が素晴らしい。こうも子供たちが変わるのかという。その様子を見ていた親御さんたちからも是非招いてくださいとお願いされました」

日本代表でも選手たちにまざり、一緒にプレーしながら指導する姿が印象的だったリカルド氏はアーセナルSS市川のトレーニングでも子供たちと汗を流しながら、情熱を持って接している様だ。そのリカルド氏は会見の冒頭に「僕たちがかかげている目標、挑戦、すごくワクワクする様な挑戦です」と語った。ただ、その挑戦というのは予めこれと決まったものではなく、1日1日の積み重ねの中で発見していくものだという。

「本当にアイディアが何千個もあって4時間ぐらい話せますが、小さなことをコツコツと。でも1日の目標を掲げて、僕も他の監督やコーチから学ぶこともあって、子供たちから学ぶこともあると思います。僕たちはそこでしっかり目を向けていかなければいけない」

リカルド氏が重視するのは子供たちがサッカーをプレーする環境を作っていくこと。アーセナルSS市川からプロ選手や海外で活躍する選手を輩出することが目的の1つにあることは間違いないが、アーセナルSS市川での活動が日本サッカーの環境を良い方に変わる指標になっていくことをスタッフと共有している様だ。そのリカルド氏にグラウンドの内外における子供たちとの接し方について質問すると「尊敬を持って接してくれること、礼儀正しく接してくれることは監督の立場から見ていいことです」と回答した。

「荷物、着替えるところを見て厳しくこれをやらなければいけないということは言いたくないけれど、今後スクールでやろうとしていることを上から押さえるのではなく、1つ1つ理由を説明してやっていくこと。今後、いろいろ変えなければいけないことは出て来ると思うが、子供の反応を見てどう変えて行くかは私も学びたい。1個1個やっていく中でやっていきたいと思います」

会見が終了すると「こんなにたくさんの方(記者)が来てくれたことを嬉しく思っています。セルフィで取ります」と会見席から”自撮り”する愛嬌を見せたリカルド氏。欧州のトップレベルでサッカーに触れてきた経験はもちろん、そうした人間性に溢れるコミュニケーションが選手たちに与える影響は大きいはず。また早い機会にアーセナルSS市川のグラウンドで取材し、観て聞いて感じたことを報告していきたい。

■アーセナルSS市川公式ホームページ

※アーセナルSS市川セレクションの詳細

アーセナルSS市川U-15&U-18練習会(セレクション)

※GKセレクション

U-15&U-18 リカルド・ロペス GK練習会(セレクション)

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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