今どき「ワードやエクセルを勉強したがる人」は年収が低い
テクハラが懐かしい
「テクハラ」という言葉が懐かしい――。今どき「テクハラ」という言葉を使うことがあるでしょうか。「テクハラ」とはテクノロジーハラスメントの略で、主にITリテラシーの低いベテラン社員に対する嫌がらせを指します。2013年ごろ、「カラハラ(カラオケを強要するハラスメント)」などとともに世間を賑わせましたが、今ではめっきり使われなくなりました。
パソコンやスマホ、タブレットなどの電子デバイスをまったく使えないのならともかく、メールをチェックしたり、タッチが遅くても所定のボタンを押すことができる程度なら合格点です。
時代は変わりました。部下のやりがい、若い人の働きがいを高めることが、現代のマネジャーに求められるスキルです。PCスキルなどどうでもいい。新しい企画のアイデアはノートに書けばいいし、部下と議論したことはホワイトボードに書いてスマホで写真を撮って残せばいい。年収の高いマネジャーが、いちいちPCを使って美しく資料を加工することなどありません。
これから社会人に求められるビジネススキル
いまだに社会人に求められる2大スキルは「コミュニケーションスキル」と「PCスキル」と言われます。「コミュニケーションスキル」は、どのように伸ばせばいいか多くの人はイメージできませんから、消去法で、
「とりあえずどこで働くにしても、PCスキルぐらいは身につけておかないと」
と言い、本を買ったりスクールに通ったりする人が後を絶ちません。
しかし、そもそもワードやエクセルを使ってどんな作業をするのでしょうか。よく考えてみましょう。その作業でどれほど会社の付加価値が高まるのでしょう。提案書や見積書などの書類は定型化されていて、何度も作り直すものではありません。業務分析や企画書を作るのにワードやエクセルは便利ですが、年間どれぐらいその種類を作るのでしょうか。オフィスワーカーのほとんどが、そんな仕事ばかりして、企業のバリューやお客様の満足度が高まるのでしょうか。日本のホワイトカラーの生産性は、先進国の中でも最低レベルです。
よく考えてみましょう。
ワードやエクセルといったPCスキルは他者に「動かされる人のためのスキル」です。「動かされる人」ばかりが集まった会社に、どれほどの価値があるでしょうか。そして個人でいえば「動かされる人」である限り、年収が増えることなどありません。年収を増やしたいなら、もっと他者を「動かす人」のためのスキルが必要です。
社会人になるとき、多くの人が「君は何をやりたいのか?」「社会人になったら人生のビジョンを持て」と助言します。にもかかわらず、とりあえずPCスキルでも磨いておこう、と考えるのは変です。
パソコンの前にばかり座っていると、「動かす人」のためのスキルを磨く機会がなくなっていきます。AIやロボット(RPA)技術がこのまま進化すれば、人間がパソコンを使って処理する作業もかなり限定的になることも頭に入れておくべきです。
これからは、パソコンの画面ではなく、もっと人間に向き合うべき時代がやってきます。そうして手に入れた人間らしいスキルが、生涯年収を高めてくれますし、人生のビジョンもかなえてくれるのです。「とりあえずPCスキルでも」という時代は終わりつつあります。