住宅地を襲う土砂!急増する「都市型土砂災害」とは
台風や前線、最近よく聞く「線状降水帯」などで大雨が降ると、心配されるのが水害や土砂災害。中でも近年増加しているのは、人が集中し生活インフラにも甚大な被害をもたらす「都市型土砂災害」です。
住宅地に土砂が流れ込み、多くの人命や家屋が失われてしまうニュースは年々増えています。
私たちの身の回りで発生する「都市型土砂災害」について、発生する理由や身を守る方法をご紹介します。
都市型土砂災害の特徴とは
「都市型土砂災害」には「都市外縁型」と「都市内部型」の2つのタイプがあるとされています。
都市外縁型
「都市外縁型」は住宅地が山に接触した場所で起きる土砂災害です。
特に山裾の扇状に広がる住宅地では、大雨や地震の影響で背後の山が崩れ土石流が発生すると一気に住宅地に流れ込み大きな被害を出してしまいます。
都市内部型
「都市内部型」は都市の中心部や住宅地が続く場所で起きる土砂災害です。
宅地醸成の際、急斜面に「盛り土」をして土地を平らにした場所では、地中の排水がうまくいかず、大雨の影響で盛り土ごと崩れてしまうことがあります。
都市型土砂災害はこんな場所で起きている
「都市型土砂災害」のうち住宅街に土砂が流れ込む「土石流」と、住宅地の中心で起きる「崖崩れ」について事例をもとにご紹介します。
土石流
2014年8月、広島市では大雨により土石流や崖崩れが相次いで発生しました。この災害では関連死を含み77名もの方が亡くなっています。
国土交通省によるとこの大雨の影響で広島市内では土石流が107か所、崖崩れは59か所で発生。住宅被害は全半壊を含む4749棟にのぼります。
住宅地が山の裾野に広がる「扇状地」で、住宅地が土石流の通り道になっていたとの指摘もあります。
崖崩れ
崖崩れと言えば山間部で起きる印象ですが、最近では住宅街の真ん中で発生する「都市内部型」も増えています。
原因の多くは「盛り土」。
山の斜面を削り平らにして土を盛った土地では、斜面が崩れないように「擁壁」で地盤を支えています。一般的に盛り土の中に設置される排水用のパイプがない古い宅地や、パイプの腐食や詰まりなどで土中の水分がきちんと排水されない場合があります。
こうした土地で急激な大雨が降ると、盛り土や「擁壁」もろとも、崖崩れが発生すると考えられています。
日本の気候が変わった?都市型土砂災害の原因は
土砂災害をもたらす原因は大雨!
気象庁のデータによると、日本では洪水や土砂災害をもたらすような1時間に50ミリ以上の激しい雨が年々増加しています。
1時間に100ミリもの大雨は、まさにバケツをひっくり返したような状態。前後左右も分からなくなるほどの激しい雨が、1980年頃と比較すると2020年ではおよそ倍になっています。
1900年代までは数十年に一度だった集中豪雨が近年では頻繁に発生し、土砂災害の大きな原因になっているのです。
日本全体で降水量が増え、これまでは山間部に多かった土砂災害が都市部でも頻繁に発生するようになったと言えるでしょう。
都市型土砂災害から身を守る方法
では私たちの身近で起きる「都市型土砂災害」から身を守るためには、どのような方法があるのでしょう。
- ハザードマップで危険な場所を知る
- ツールを利用する「キキクル」「アメダス」
- ワークショップや「まち点検」
ハザードマップで危険な場所を知る
全国の自治体では「土砂災害警戒区域」を指定しており、ハザードマップで確認することができます。自分の家が危険な場所にないか、災害が発生する前にハザードマップでチェックしておきましょう。
<ハザードマップの見方>
- 黄色:土砂災害警戒区域
- 赤色:土砂災害特別警戒区域(住宅建築制限エリア)
※黄色いサンカクのエリアは扇状地。集中豪雨の際には土砂が流れ込む可能性が高い場所
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から、全国のハザードマップ(洪水・津波・高潮・土砂災害・火山など)を見ることができますので、自分の地域を調べておくことをおすすめします。
ツールを利用する「キキクル」「アメダス」
キキクル
雨による災害の危険度を地図上にリアルタイム表示する「キキクル」。また「土砂」「浸水」「洪水」3つの災害警戒度を5段階で色分けして示しています。
上の図では黄色が土砂災害、茶色の部分は土砂災害警戒区域等で、重なる部分では土砂災害に注意が必要なことが分かります。
<色の基準>
- 黒:災害切迫 重大な災害が発生または切迫している
- 紫:危険 重大な災害がいつ発生してもおかしくない
- 赤:警戒
- 黄:注意
- 白:今後の情報に留意する(洪水では水色)
アメダス
「アメダス」は全国の観測所で気象の自動測定を行うシステムです。降水量、風向・風速、気温、湿度の観測を時間的にも地域的にも細かく監視しているため、特に雨の災害発生に対応するためにはとても便利です。
「まち点検」やワークショップで街の危険を知る
国土交通省は「まちを歩いて防災マップをつくろう」と呼びかけ、リーフレットも作成しています。ご近所さんと交流しながら街中の危険な場所を再確認し、楽しみながら防災意識を高められると効果が期待されています。町内会などで実験してみるのもオススメです。
まとめ
人口密度が高い場所で発生する「都市部型土砂災害」は、新しい形の災害として、今後も被害が増えると考えられています。
インフラ整備も重要です。その上で自分が暮らしている家や地域のことを知ることが大切ですね。
都市型土砂災害の被害に遭わないよう、日ごろから危険な場所などを確認するようにしましょう。