シリアの石油鉱物資源省は国内で生産される原油の80%以上が米国によって盗奪されていると発表
シリアの石油鉱物資源省は2月5日、2011年3月の「アラブの春」波及を機にシリア内戦が発生して以降、現在に至るまでの石油部門の直接・間接の被害総額が約1005億米ドル(約11兆6000億円)に達すると発表した。
石油鉱物資源省が、シリア内戦の被害や復興状況について報告するために開催した会合で明らかにしたところによると、シリア国内での2021年の原油生産量は約3140万バレル、1日平均で8万5900バレルが生産された。
このうち、1日平均で1万6000バレルが政府支配地域で精製される一方、1日平均7万バレルが東部地域を占領する米国とその「傭兵」(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍、北・東シリア自治局など)によって盗奪された。
米国は、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を行うとして、2014年9月からシリア領内での爆撃を開始、2015年10月からに地上部隊を駐留させるようになった。2018年10月には、シリア領内の油田を防衛すると主張し、ダイル・ザウル県やハサカ県の油田地帯を中心に基地を設置し、違法駐留を続けている。現在、シリア領内には27カ所(ハサカ県15カ所、ダイル・ザウル県9カ所、ラッカ県1カ所、ヒムス県2カ所)の米軍基地があり、900人とも3,000人とも言われる将兵が展開している。
シリアに駐留する米軍は、ダイル・ザウル県やハサカ県で生産される原油、食糧を、イランとの国境に違法に設置したワリード国境通行所を通じて定期的に持ち出している。
石油鉱物資源省はまた、2021年の天然ガスの生産量が約45億立方メートル、1日平均で1250万立方メートル(うち1200万立方メートルはクリーンガス)が生産されたと発表した。
うち79%が電力省に、6%が工業省に、15%が石油鉱物省に引き渡された。
電力省は1日平均900万立方メートルの天然ガスをハサカ県北東部のスワイディーヤ発電所(スワイディーヤ村)での発電のために使用した。
このほか、家庭用ガスの生産量は11万8000トン、1日平均323トンが生産された。
ヒムス石油精製所(ヒムス県)、バーニヤース石油精製所(タルトゥース県)での石油派生物から再生産された石油は570万トン、ハイオク・ガソリンの生産量は94万4000トン、レギュラー・ガソリンの生産量は1万1000トン、灯油の生産量は151万9000トン、燃料の生産量は273万4000トン、アスファルトの生産量は7万7000トン、リン酸塩の生産量は110万トン、岩塩の生産量は11万3000トンだった。
シリア内戦発生以降の被害は、職員235人が死亡、46人が負傷し、112人が誘拐・拉致の被害に遭い、人的被害の総額は約1005億米ドルに達した。