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「帰省するのが苦痛」とおっしゃるあなたへ。世界はバランスでできています。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

数年前のことです。
家内から、「今度の土曜日、〇〇(私の子どもの名前です)が来る」と聞いたとき、私は家内にふっと尋ねました。「何しにくるの?」と…。
すると家内は、何を馬鹿なことを訊いているんだとばかりに、「何しに? って、実家だからに決まってるじゃない」と、当たり前のように言いました。私は、そう言われ、ハッとしました。

私は、18で家を出たのですが、我が生涯、実家に帰省したいと思ったことは、ただの1度もありません。それは、私が、私を腐(くさ)すことや貶(けな)すことや否定することに熱心な親兄弟に会うのが苦痛だったからです。

でも私は、毎年、盆暮れには、出来る限り、実家に帰りました。帰るよう心掛けていました。それが、子どもの務めだと思っていたし、帰省しないことを親に怒られるのが嫌だったし、自分自身、親不孝者になるのが嫌だったからです。

今、私は、呼びもしないのに、暇さえあれば私の家に帰って来る自分の子どもを見ると、大変に不思議な気持ちになります。そして、家で思いっきりくつろいでいる子どもを見ると、もっと不思議な気持ちになります。

私は、実家に帰ってくつろいだことなど、ほとんどありません。
実家に帰れば、親兄弟に気を遣い、叔父や叔母に会えば、頭を下げ、笑顔を見せ、そうやって、いつもピリピリ、気持ちを張りつめさせ、緊張していたからです。

そんな私が、結婚し、子どもをもうけ、子どもが結婚し、子どもが子どもを産み、孫の顔を見られるようになるなんて、ホント夢のようです。もっともこれは、私ではなく、ほとんど家内のおかげですが…。

世界は、バランスでできています。

私は、親兄弟には恵まれませんでしたが、友だちや配偶者には恵まれました。親は選べないかもしれませんが、友だちや配偶者は選べます。

ひょっとしたら私は、親兄弟に恵まれなかったからこそ、友だちや配偶者に恵まれたのかもしれません。そう考えると、「世界はホントうまくできているなあ。バランスが取れているなあ」と思います。

※ここで余談です。
厳密に言うと、親は私が選んで生まれてきました。
でも、このことを大声で言うと、心理カウンセラーではなくスピリチュアルカウンセラーと間違われそうなので、大きな声で言うのは控えます。またこれは、「スピリチュアルカウンセラーより心理カウンセラーのほうが偉い」とか「真っ当だ」いう意味ではありません。

両親が他界して、もう10数年が経ちました。私も60を超え、もう無理して親戚や兄弟に会おうとするのはやめました。で、実際に、数年前からやめています。会うことはもちろん、電話など連絡をとることもありません。今は、大変に清々しい気持ちでいっぱいです。

両親に対しては嫌な想い出ばかりですが、最近はどういうわけか、両親から優しくされたことをよく思い出すようになりました。これは、年齢のせいかどうかわかりませんが、本当にありがたいことであり、心から感謝しています。

私が死んだら、
あの世で両親に会えるかどうか不明ですが、
もしも会えたら、私は両親に、丁寧にお礼を言おうと思っています。

今、「帰省が苦痛」とおっしゃっている人たちへ、私からのメッセージですが、それは、「無理して帰省しなくていいですよ。どうぞパートナーや友人を大切にしてください」というものになります。そして、「将来は、ひょっとすると、あなたも私と同じ、両親に感謝できるような、そんな境地になれるかもしれませんよ」というものです。

私のカウンセリングルームには、両親が亡くなって10数年が経っているにも関わらず、両親に対する憎悪の気持ちが消えず、苦しんでらっしゃるクライアントが、数名、定期的に通ってくださっています。そんなクライアントも、私のカウンセリングを受けるうちに、皆さん、自然に、両親に対する感謝の気持ちが沸いてくるようです。そんなクライアントから、しみじみお礼を言われると、私自身、本当にありがたい気持ちになります。

最後になりますが、誤解されるのが嫌なので申し上げますが、
私が心理カウンセラーになったのは、私が心理学や精神医学に興味があり、人の話を聴くのが上手だったからです。決して、不幸な生い立ちだったからではありません。このことはハッキリと申し上げておきたいと思います。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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