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下から読むと不思議な広告「さ、ひっくり返そう。」 この手法、世界では5年前にバズっていた

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
大逆転は、起こりうる。(写真:アフロ)

「さ、ひっくり返そう。」

そごう・西武のお正月広告が、ネット上で注目を集めているそうだ。

大逆転は、起こりうる。

わたしは、その言葉を信じない。

どうせ奇跡なんて起こらない。

それでも人々は無責任に言うだろう。

小さな者でも大きな相手に立ち向かえ。

誰とも違う発想や工夫を駆使して闘え。

今こそ自分を貫くときだ。

しかし、そんな考え方は馬鹿げている。

勝ち目のない勝負はあきらめるのが賢明だ。

わたしはただ、為す術もなく押し込まれる。

土俵際、もはや絶体絶命。

出典:そごう・西武の広告

一見ネガティブな内容だが、下まで読んでもう1度下から上に読み返すとあら不思議。逆転劇が起こるということで、SNS上で話題になっている。

私はこれを見て、ニューヨークのある少女のことを思い出した。この「手法」が、英語圏のネット上で5年前にバズった、あるポエム(詩)と酷似しているからだ。

日本語圏にいると、英語圏の話題、特に何がソーシャルメディアでバズっているのか情報としてなかなか入りづらいので、ニューヨークのこの少女のことを知っている人はほとんどいるまい。が、ちょうどタイミングよく同様の手法が日本で話題になっているので、ここは5年前に英語圏で話題をさらった少女の存在と、その天才的な詩もお伝えしたい。

作者は、ニューヨーク・ブルックリンのクラウンハイツ地区に住むユダヤ系の少女、チェイニー・ゴーキン(Chanie Gorkin)さん(当時17歳)。

チェイニーさんは2014年、学校の課題の一環として、コンテストに提出した自作の詩をPoetry Nationに投稿した。しばらくは話題にならなかったが、その翌年、ロンドンに住む男性がこの詩を見つけ、詩の写真をパブに貼り付けたり、ソーシャルメディアに載せたところ、世界中で瞬く間にバズった。(5年前の当時でFacebookなどで2万5,000件シェアされ、イメージシェアサイトのimgurでは130万人以上に閲覧されている)

そのバズった「Worst Day Ever?」(史上最悪の日?)ポエムはこちら。

これもネガティブな文言から始まる。

Today was the absolute worst day ever

今日は明らかに史上最悪の日だった

And don’t try to convince me that

私をそのように思い込ませないで

There’s something good in every day

毎日何らかの良いことは起こっているから

Because, when you take a closer look,

なぜなら、それらよく見てみると

This world is a pretty evil place.

この世はかなり邪悪な世界

Even if

だとしても

Some goodness does shine through once in a while

時々、良いことが輝きを放ちながら起こっている

Satisfaction and happiness don’t last.

満足や幸せは長く続かない

And it’s not true that

そしてそれは本当のことではない

It’s all in the mind and heart

それらはすべて頭や心の中で起こっている

Because

なぜなら

True happiness can be attained

本当の幸せは手に入れられる

Only if one’s surroundings are good

良いことに囲まれている時だけ

It’s not true that good exists

良いことが存在しているなんて、本当かしら

I’m sure you can agree that

あなたもそう思うはず

The reality

ここで起こっていることが(を)

Creates

創造する

My attitude

私の態度を(が)

It’s all beyond my control

それはすべて私のコントロール外

And you’ll never in a million years hear me say

そして、私がそう言っているのを100万年もの間、聞かないだろう

Today was a very good day

今日はとても良い日だった

出典:Worst Day Ever? - Chanie Gorkin

詩の最後にこのように書かれている。

Now read it from bottom to top, the other way, And see what I really feel about my day.(さぁ、今度は下から上に逆に読んでみてください。そして今日という日に何を感じたか見てみてください)

チェイニーさんのお母さんが当時(2015年)、娘の代わりにテレビ取材に応えていた。またチェイニーさん自身がCBSニュースに「少しでも価値観の変化をもたらすことができたら幸せ。詩に影響された人がほかの人に影響を及ぼし、広がっていったらうれしい」とコメントしている。

チェイニーさんの詩はとてもシンプルで、わかりやすい。そして16、17歳とは思えぬ言葉選びのセンスに驚く。(英語なので日本語に訳すとわかりづらいかもしれないが、少しは雰囲気がつかめただろうか)

詩を読んだ人は、何らかのイメージが浮かぶだろう。私はこの詩でいつも思い出すのが「人間万事塞翁が馬」という教えだ。良いことも悪いことも交互にくるから、良いことが起こった時に浮かれ過ぎず、悪いことが起こった時に落ち込みすぎないようにということ。

私に大切なことを思い出させてくれる、大好きな詩だ。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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