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コンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

JSF軍事/生き物ライター
防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

 12月24日、防衛装備庁は11月12日に実施した「防衛装備庁技術シンポジウム2024」の動画アーカイブの配信および資料の公開を開始しました。公式ページのオーラルセッションおよび展示の箇所にそれぞれリンクされています。公開されている新技術の研究は多岐にわたります。実にオーラルセッションは17項目、展示は44項目もあります。

 全てを一度に紹介するのはとても無理なので、ここではオーラルセッションから「誘導弾用弾頭技術の新たな可能性 ~高威力・軽量・高精度~(資料)」の中から特に「コンビネーション弾頭」を紹介します。動画および資料になります。

弾頭部の高威力化に向けた取り組み

  • チタン合金製弾頭:海外ではNSM対艦ミサイルの弾頭など既に採用例あり

弾頭部の高威力化に向けた取り組み

  • シーバスター弾頭の研究:対艦用の二重貫通弾頭(過去の関連記事
  • コンビネーション弾頭の研究:対艦弾頭と対地弾頭が合体した弾頭
  • 耐高衝撃弾頭及び信管の研究:対コンクリート弾頭と自動遅延信管

信管の高精度化に向けた取り組み

  • 電気式安全起爆装置:部品の全てを電子的に制御した信管(非・機械式)

 シーバスター弾頭(対艦用二重貫通弾頭)は成形炸薬弾+徹甲榴弾で既に形状が知られていますが、これは”対艦用”の二重貫通弾頭としては世界初の存在です。そしてコンビネーション弾頭は文書で存在だけは以前から知られていましたが、初めて防衛装備庁技術シンポジウム2024で写真が公開されています。

 コンビネーション弾頭は徹甲榴弾+EFP弾頭という構成です。なお防衛装備庁の資料には前部弾頭が徹甲榴弾/成形破片弾頭とありますが、ここでの成形破片とは多数の弾殻破片を成形するという榴弾としての機能の意味であり成形炸薬の意味ではありませんので注意してください。そして後部弾頭のEFP弾頭とは明らかにマルチプル(多数、高密度)型です。このマルチプルEFPについて自衛隊では高密度EFPという名称で呼ばれています。EFP(explosively formed penetrator)とは自己鍛造弾という爆発成形侵徹体で、側面の多数の窪みが炸薬の爆発で圧縮されて小型の徹甲弾のように飛んで行きます。

クラスター爆弾の代替を目指す自衛隊の新型兵器「高密度EFP」


 マルチプル(高密度)EFP弾頭については過去の関連記事をご覧ください。これにはEFPの「積層化技術」が採用されています。

 単純に徹甲榴弾の弾殻の側面に大きなEFPの窪みを付けるものならばフランス製の対艦ミサイル「エグゾセ」など他国で何十年も前から前例があるものですが、日本が新開発したコンビネーション弾頭は徹甲榴弾とEFP弾頭をわざわざ分けています。日本のEFP弾頭は積層化技術を採用したマルチプル(高密度)型であり、旧来型の単純に側面に窪みを付けただけのEFPよりも遥かに多くの数のEFPを打ち出せるものと推定されます。

コンビネーション弾頭の構造イメージ絵

防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)
防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

※コンビネーション弾頭の実物写真

防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)
防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

※標的貫徹後の弾頭

防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)
防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

※コンビネーション弾頭が艦艇の舷側を模擬した標的を貫徹可能であることを確認した。

防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)
防衛装備庁資料よりコンビネーション弾頭(徹甲榴弾+高密度EFP)

※コンビネーション弾頭の研究:同一の弾頭で空母、駆逐艦、ミサイル艦等の様々な海上目標に対処可能かつ、島嶼(陸)上の地上目標も対処できることを目標とした。

  • 前部弾頭:運動エネルギーによる侵徹効果と起爆点近傍を破片で面制圧する破片効果を担う。
  • 後部弾頭:遠方及び破壊難易度の高いターゲットに対し、 EFPで面制圧する破片効果を担う。

 コンビネーション弾頭の運用イメージ絵からは地上目標には空中起爆、海上目標には貫通起爆を行うものと見られます。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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