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水卜麻美アナ デマ記事に「今も傷つき続けている」24時間TV:誹謗中傷の心理:人はなぜ悪口を言うのか

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
イラストはイメージ:今日も傷ついて人がいる(提供:イメージマート)

■水卜麻美アナ デマ記事に「今も傷つき続けている」

日本テレビによる毎年恒例の「24時間テレビ」。その番組の中で、アナウンサの水卜(みうら)麻美さんが、ネット上でデマが拡散される現状を憂い、語りました。

「これまで、私に関してまったく事実ではないこと、言ったこともないことで記事になったことが、実は数え切れないくらいありまして。傷ついてきました」。

「『そんなこと有名になった証拠なんだからいいじゃないか』っておっしゃる方もいらっしゃるんですが、それはこの仕事をしている人だけじゃなくて、今はどんな方でもそういう風な気持ちにさせられる可能性があるから、やっぱり声を上げなきゃいけないなと、私も思っていますし、今も傷つき続けている。そして解決できていない問題になっています」

水卜アナウンサーの先輩にあたる藤井貴彦アナウンサーは、後輩の発言を受けて語ります。

「テレビに出ているみなさんなんてね、何を言われても大丈夫なメンタルと思われているかもしれませんが、本当に小さなことで傷ついているという現実があります」。

水卜麻美アナ デマ記事に「今も傷つき続けている」24時間TVで切実吐露「解決できない問題」:デイリー8/29Y!>

■デマや誹謗中傷は、誰に対しても許されない

相手が誰であれ、あなたがその相手をどう思っているのであれ、デマや誹謗中傷を公言することは許されていません。マスコミが流す記事はもちろん、個人がネットで公言するのも同じです。

芸能人でも政治家でも、事件の被害者関係者でも加害者関係者でもだめです。すべての人に人権があるからです。たとえば、ヤフーコメントのルールにおいても、同様のことが書かれています。

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たしかに「有名税」はあるでしょう。街を歩いていて注目されたり、人びとの雑談の中で話のネタになったり。それは当然です。芸能活動が公に批評されることも当然ですし、政治家は公人中の公人ですから、大いに批判にさらされるべきです。

けれども、だからといって、デマや誹謗中傷をしても良いわけではありません。何がデマや誹謗中傷で、何が正しい批評や批判なのか。あいまいな部分はあるでしょう。表現の自由が侵されてはいけません。しかし、有名人ならデマや誹謗中傷も仕方がないと考えてはいけないでしょう。

すでに多くの悲劇が起きているのですから。

■人はなぜデマを流し、誹謗中傷するのか

「デマ」は、本来の意味では、わざと意図的に流すウソです。これは、だめですね。また、明確な意図や目的がなくても、誤情報はだめです。

しかし、誤情報は面白いのです。愉快であり、アクセス数も稼げるでしょう。「ライオンが逃げた」の情報の方が、「ライオンが逃げたというのは誤情報」という情報よりも、速く広く拡散されていきます。

さらに、「悪口」は場を盛り上げます。人間は、心の底では良い人間関係を求めているのですが、良い関係や良い話題がないときでも、そこにいない人の悪口は盛り上がるものです。

仲間が集まって誰かの悪口を語るのは、道義的には問題ですが、それは自由でしょう。ただしマスコミではもちろん、世界に向けて公に開かれているネットで公言するとなると話は別です。

だれもが、テレビに出て(あるいは渋谷の交差点で)名前と所属を明らかにして、悪口で人を誹謗中傷するのは、簡単にはできないでしょう。覚悟が必要です(テレビなら、止められそうです)。

インターネットも本当は同様で、誰が見ているかわかりませんし、大炎上する可能性もあるのですが、ネットは公の場なのに個人的な場のように錯覚しやすいメディアなのです。

また、匿名でネットを利用していることが多いでしょう。人は匿名になると、平気でルール違反をしやすくなるものです。

■有名人なら叩いて良いか

芸能人や政治家など有名人なら、そんな程度のことで傷つくなと言う人もいます。たしかに、顔と名前を出す仕事を続けるなら、打たれ強さは必要かもしれません。実際、日本中から非難されてもふてぶてしく活動を続ける人はいます。

しかし、それはまた別問題です。相手が力士やプロレスラーなら、殴っても良いということはありません。相手がケガをしなくても、暴行罪で捕まります。

あなたやあなたの家族が、市会議員になるかもしれません、社長になるかもしれません。良い行為や悪い行為で、マスコミに出るかもしれません。

そのとき、有名だから、強いのだから、悪いのだから、何を言われても仕方がないということはないでしょう。

より良いネット社会、より良い日本社会を作っていきたいと思います。

声を上げてくれた水卜さんを、支援したいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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