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祖国の平和を願う18戦全勝9KOの世界ライト級4位

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナ代表としてロンドン五輪に出場し、ライトウエルター級で銀メダルを獲得したデニス・ベリンチクが、先日プロデビュー以来18連勝を飾った。WBOインターナショナル・ライト級タイトルマッチとして行われた同ファイトは、ベリンチクが、117-111、116-112、115-113でスウェーデン人ファイターであるアンソニー・イギットを下して防衛を果たした。

写真:ロイター/アフロ

 ロンドン五輪でも対戦した両者だったが、今回も勝者は同じだった。ベリンチクにすれば、無難な相手と呼べたであろう。

 WBOインターナショナル・ライト級王者は、WBOで4位、IBF12位、WBCでは16位にランクされ、2試合連続で祖国から離れた地でのファイトとなった。

 8回戦時代にブルガリアのリングを経験してはいるが、プロデビューから15試合を母国であるウクライナで戦っているのに、今、その場で戦えない理由は、読者の皆様もご存知だろう。

写真:ロイター/アフロ

 ベリンチクは2022年12月3日のファイトで、ヘルメットをかぶり、アーミー服を身に纏ってリングに上がった。その光景を目にしたあるボクシングファンは、「これは、亡くなったウクライナの方に対する追悼だ」と語り、別の者は「デニス・ベリンチクが母国に敬意を表した」と言った。また、ある人は彼の行為を「伝説」と評した。

写真:ロイター/アフロ

 ウクライナ人ファイターたちは、リングで向かい合う相手だけでなく、自身を、そして家族を、国家を守るべく<敵>との戦いを余儀なくされている。彼らに早く平穏な日が訪れることを、心から願う。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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