なぜデンベレはバルサと契約延長しなかったのか?ディバラ、ポグバ、イスコ...“フリーの選手”の去就。
ある種の問題は、時間が経てば経つほど複雑になる。
バルセロナはウスマン・デンベレとの契約を今季終了時までとしていた。7月1日にフリーの身になったデンベレについて、ジョアン・ラポルタ会長は「我々のオファーを受ければ残留の可能性はある。その期限は設けていない」と語っている。
また、デンベルを高く評価しているのはシャビ・エルナンデス監督だ。
「バルサでプレーするというのは、ジェットコースターに乗るようなものだ。最大の喜びと失望があり、そのようなシチュエーションが選手に安定したメンタルを要求する。楽しめる時もあれば、苦しむ時もある。私は選手としてそれを経験している」とは今季終盤のシャビ監督のコメントである。
「私だったら、もうサインしているよ。我々の財政は、最高の状態ではない。それは残念なことだ。調整する必要があり、そのためにマテウ(・アレマニー/フットボールディレクター)が24時間働いている。ジョルディ(・クライフ)も同様だ。デンベレの残留を願っている。我々に対する相手の守備の仕方から、ウィングに違いをつくれる選手が必要だ。デンベレはまさにそういう選手なんだ」
デンベレに残留の可能性は残されている。一方、チェルシー、パリ・サンジェルマンと複数クラブが彼の動向を注視している。
■フリーの身になる選手
ただ、このような状況に置かれているのは、デンベレだけではない。
この夏、多くの選手が契約満了を迎えた。なかには、すでに去就が定まった選手もいる。アントニオ・リュディガー(前所属チェルシー/移籍先レアル・マドリー)、イバン・ペリシッチ(インテル/トッテナム)、アンドレ・オナナ(アヤックス /インテル)、ガレス・ベイル(マドリー/ロサンジェルスFC)といったプレーヤーだ。
他方で、ポール・ポグバ、パウロ・ディバラ、アンヘル・ディ・マリア、イスコ、マルセロ、ルイス・スアレスらが現在新天地を探している。
「フリートランスファーの移籍は、フットボール界のピラミッドにおいては、下層で一般的になっていた。上層では、トップレベルでプレーできなくなった選手が、カテゴリーを落とす際に使われていた」と話すのはKPMGのアンドレア・サルトーリ氏である。
「だが、昨年夏のマーケットでは、キャリアのある選手がフリーで移籍していた。その割合が高まってきている。(ジャンルイジ・)ドンナルンマや(ダビド・)アラバが契約満了を待ち、移籍金ゼロで他クラブに移籍している」
■財政悪化と補強費
無論、フリーの移籍が増えたのは、経済的な事情がある。端的に言えば、新型コロナウィルスの影響だ。
各クラブの財政は悪化した。2021−22シーズンと2020−21シーズンの補強費を比較すれば、明らかだ。
プレミアリーグ(13億3000万ユーロ/14億1000万ユーロ)、セリエA(5億5000万ユーロ/7億2500万ユーロ)、ブンデスリーガ(4億1500万ユーロ/2億9000万ユーロ)、リーグ・アン(3億7500万ユーロ/4億30000万ユーロ)、
リーガエスパニョーラ(2億9500万ユーロ/3億95000万ユーロ)というのが5大リーグの補強費だった。
移籍金ゼロで補強を敢行できるのは、クラブにとっては、願ってもいない話である。また、選手側(代理人あるいは代理会社含む)にもメリットがある。
移籍金がゼロである代わりに、高い年俸を受け取れる可能性が高まる。さらに、コミッションを発生させ、それを懐に入れられる。近年、FIFAがそのコミッションを取り締まる動きを見せているが、現状ではお金を生むひとつの手段になっている実態がある。
この夏、マドリーが移籍金8000万ユーロ(約112億円)でオウリエン・チュアメニを、リヴァプールが移籍金7500万ユーロ(約105億円)でダルウィン・ヌニェスを、マンチェスター・シティが契約解除金6000万ユーロ(約84億円)でアーリング・ハーランドを獲得している。
経済面では「コロナ以前」に戻りつつある。それでも、移籍金ゼロで選手を獲得できるのは魅力的なオプションだ。様々な思惑が、宙を舞っている。