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3度ダウンを奪っても勝者になれなかったベネズエラ人ファイター

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 ベネズエラとメキシコの血を引くエンドリ・サベードラ(33)とオーストラリア人であるマテオ・タピア(26)がダウンの応酬を繰り転げたミドル級10回戦は、94-92でタピア、93-93、93-93のスコアでドローとなった。3度ダウンを奪ったサベードラは、判定を告げられた後、怒りを隠そうとしなかった。

Joseph Correa/Premier Boxing Champions
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 第3ラウンドに連打からの右フックで、サベードラがダウンを奪う、ダメージの残るタピアのボディを攻め、同ラウンド終盤にも再度オーストラリア人ファイターの腰を落とした。

Joseph Correa/Premier Boxing Champions
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 試合後、サベードラは振り返った。

 「私はメキシコの勇者だ。自分がリングを支配できると信じていた。私はできる限りのことをし、力を振り絞った。が、彼が2度目のダウン後に立ち上がったことに驚いたよ」

 そのまま流れに乗るかと思われたサベードラだが、5回終了間際にカウンターの右ストレートを浴び、腰からキャンバスに沈む。

Joseph Correa/Premier Boxing Champions
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 タピアも言った。

 「ヤツはインサイドでショートパンチを放ってきたね。俺は足があまり動かなくなっていたので、踏みどどまって手を出すしかなかった」

 打ちつ打たれつとなった同ファイトだが、後半に向けてサベードラが粘りを見せる。執拗にボディブローを放って、タピアを削った。そして第9ラウンドに、3度目のダウンを奪う。

 ダウンの数で言えば3−1。それでも、サベードラの勝利と見るジャッジはいなかった。

Joseph Correa/Premier Boxing Champions
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 17勝無敗1分となったタピアは、言葉を続けた。

 「10ラウンドの厳しい戦いに備えていた。どちらに転んでもおかしくなかったと思う。苦しい戦いだった。彼が前に出てくることはわかっていたし、チャンスがあれば、カウンターをと考えていた。ファンに素晴らしい戦いを見せることができて嬉しいよ」

Joseph Correa/Premier Boxing Champions
Joseph Correa/Premier Boxing Champions

 しかし、16勝(13KO)1敗1分けと、白星を逃したサベードラは、憤懣やるかたない思いでいっぱいという表情をしながら、話した。

 「試合を見た皆さん、そして、ここにいるファンが私の勝利だと感じてくれていることはわかった。私は自分の仕事をするなんだけだ。ジャッジも己の義務を果たさねばならないはずだよな」

 さて、サベードラはどう、この悔しさを晴らすか。いかに這い上がるのか。このベネズエラ人ファイターの動向を見守りたい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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