世界が注目 エルニーニョ現象のいま
世界が注目するエルニーニョ現象
今や異常気象を引き起こす代名詞ともなったエルニーニョ現象。日本から遠く離れた太平洋熱帯域で起こる現象が、異常気象を引き起こすと言われてから久しい。でも、日本の天候にどのくらい影響するのか、未だ、はっきりと解明されたわけではありません。
それでも、この夏は冷夏の可能性があるといわれているのは、熱容量の大きい海洋がひとたび変化を起こすと、天気現象(大気)に及ぼす影響がとても大きいからです。
先日、米海洋気象局(NOAA)は今シーズンのハリケーン予報を発表しました。それによると、大西洋で発生する熱帯低気圧の数は、70%の確率で平年並みの8個から13個と予想され、エルニーニョ現象の動向がカギになると述べています。
エルニーニョ現象が発生すると、風の変化(wind shear)が大きくなるため、熱帯低気圧の発生数やハリケーンの発達に影響があるそうです。
エルニーニョ現象の発生は?
このように世界が注目しているエルニーニョ現象ですが、定義は世界で統一されているわけではありません。日本の場合は、海面水温と基準値との差を5か月移動平均した値が、6か月以上続けて0.5度を上回った場合をエルニーニョ現象の発生期間とします。
一方、アメリカは違う条件です。
ややこしいですが、海洋は変化がゆっくりなだけに、発生を見極めるのがとても難しいのです。現在は「エルニーニョ現象の発生に近づいた」というあいまいな表現になっています。
冷夏というには、まだ早い
テレビ、新聞、雑誌、世の中はエルニーニョ現象による冷夏予想でもちきりです。ただ、今のところ冷夏に結びつくような状況にはなっておらず、逆に、夏の高気圧(太平洋高気圧)は強まる兆しをみせています。
これまでの調査、研究では、エルニーニョ現象が日本の天候に影響する割合は3割程度とされています。いいかえれば、エルニーニョ現象以外の影響が7割もあるわけですから、そう簡単に冷夏といえないのです。
私に「灰色の脳細胞」があったなら、と思ってしまう今日この頃です。
【参考資料】
エルニーニョ監視速報(No. 261),気象庁地球環境・海洋部
NOAA predicts near-nomal or below-nomal 2014 Atlantic hurricane season,May 22 2014
石川一朗,前田修平,2013:エルニーニョ/ラニーニャ現象に代表される熱帯海洋変動とその影響,平成24年度季節予報研修テキスト「季節予報作業指針」,気象庁地球環境・海洋部,123-156.