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パリ五輪女子ボクシング「性別論争」 #専門家のまとめ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 イタリア代表のボクサー、アンジェラ・カリーニがアルジェリア代表のイマネ・ケリフ戦において46秒で棄権した画像が、世界中で物議を醸すこととなった。ケリフが生物学的な男性であり、このスポーツ最大の祭典で女性と対戦することを許されているのか? という疑惑によって煽られた。

 当初、トランスジェンダーとも報じられたケリフは、女性として生きてきた。が、XY染色体が発見されており、IOCとIBAの主張が異なっている。

ココがポイント

▼アルジェリア代表のイマネ・ケリフ選手と対戦し、46秒で棄権したイタリア代表、アンジェラ・カリーニ選手が5万ドルを得る。

・国際ボクシング協会 パリ五輪で途中棄権のイタリア代表選手に賞金5万ドル授与へ(日テレNEWS NNN)

▼ボクシング女子に出場したイマネ・ケリフ選手が男性の染色体を持っており、五輪出場を巡ってIOCとIBAの見解が分かれている。

・ボクシング女子「性別」巡り賛否 イタリア首相も“反発”大きな議論に(FNNプライムオンライン)

▼男性ホルモンの一種、テストステロンの上昇を理由に、昨年の世界選手権で失格となった選手が五輪に出場して物議を醸している。

・【パリ五輪】ボクシング女子、選手の性別が議論に 相手が46秒で棄権(BBC NEWS Japan)

エキスパートの補足・見解

 ケリフ選手は、昨年の女子ボクシング世界選手権で、国際ボクシング協会(IBA)の資格基準を満たせず、失格となっている。国際オリンピック委員会(IOC)は、ケリフ選手が失格となったのは、男性ホルモンの一種であるテストステロンの上昇によるものだったと述べた。

 IBAはIOCと激しくやり合っているため、五輪のボクシングにタッチしていない。どのような検査が行われたのかについて、「テストステロン検査ではなかった」と言及するに止まった。その結果、選手たちに対する<誤解を招くような情報の流布につながった>とIOCは述べている。

 過去に国際大会で失格になった選手が五輪の舞台に上がれば、物議を醸すのは必須だ。結局のところ、両団体の対立がもたらした問題であるように映る。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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