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誰が一番イケメン?変顔?=街中のセセリ3種幼虫の見分け方

天野和利時事通信社・昆虫記者
上がチャバネセセリ、下左がイチモンジセセリ、下右がキマダラセセリの幼虫。

 前回紹介したイネツトムシ(イネ科の葉を巻くセセリ蝶の幼虫)3種は、それぞれ顔(頭部)に特徴があり、誰が一番イケメン(あるいは変顔)なのかを競い合っている。

 小さい幼虫の時は3種の見分けがつきにくいのだが、終齢幼虫になると、それぞれに個性が強くなり、特徴が際立ってくる。

 1番手に登場するのは、ビジュアル系のメイクを施したロックシンガー風のチャバネセセリの幼虫。女子(メス)であれば、文句なくこのチャバネセセリ幼虫が、一番の美貌の持ち主だと言えるだろう。

 緑色の顔の両側に走る白と茶色の縞模様は、前衛芸術を思わせる。しかし男子(オス)だとすると、やや化粧が濃すぎる感じもして、男らしさに欠ける印象だ。

女子だとすれば一番魅力的なのはチャバネセセリの幼虫。
女子だとすれば一番魅力的なのはチャバネセセリの幼虫。

チャバネセセリの終齢幼虫と、脱ぎ捨てた中齢幼虫時代のお面。
チャバネセセリの終齢幼虫と、脱ぎ捨てた中齢幼虫時代のお面。

チャバネセセリの蛹。脱ぎ捨てた幼虫時代の頭部の目玉模様が中央に残っている。
チャバネセセリの蛹。脱ぎ捨てた幼虫時代の頭部の目玉模様が中央に残っている。

 このチャバネセセリ幼虫の顔の色柄を逆転させたような容貌を持つのが、キマダラセセリだ。顔の中心を貫く太い茶色の部分が、周囲の白さによって際立って見え、男らしさが強調されている。

キマダラセセリの終齢幼虫。
キマダラセセリの終齢幼虫。

 そして最後は、イチモンジセセリの幼虫。茶色の枠で囲まれた白い半円の中に、3本の尖塔を持つ教会がそびえ立つような容貌は、飾り気がなく、いさぎよい感じがする。3種の中では一番の男前と言えるかもしれない。

イチモンジセセリの終齢幼虫。
イチモンジセセリの終齢幼虫。

 結局誰がトップかと言うと、昆虫記者の独断と偏見に基づく評価は、一番のイケメンがイチモンジセセリ、一番の変顔がチャバネセセリということに落ち着いた。

 残念ながらどっちつかずの評価となったのはキマダラセセリだが、成虫の華やかさではこのキマダラセセリが断然トップだと思う。

左からイチモンジセセリ、キマダラセセリ、チャバネセセリの成虫。
左からイチモンジセセリ、キマダラセセリ、チャバネセセリの成虫。

 まあ、誰が1番になろうとも、結局は地味なセセリ蝶の中でのドングリの背比べに過ぎないとも言える。しかし、派手な南国風の蝶ばかりではなく、超庶民派のセセリ蝶にもそれなりの魅力があると昆虫記者は思っている。その一方で、こんな地味な記事に最後まで付き合ってくれた読者に対して、申し訳ない思いがあるのも事実だ。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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