オートバイのあれこれ『最強の空冷ツアラー・FJ1100』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『最強の空冷ツアラー・FJ1100』をテーマにお話ししようと思います。
皆さんは、『FJ1100』というオートバイをご存知でしょうか。
FJ1100は、1984年(昭和59年)にヤマハから登場したバイクです。
FJは、快適なクルージングを楽しむためのスポーツツアラーとして開発されました。
FJが登場した頃の日本のバイク市場は、レーサーレプリカブームに象徴されるようにスポーツバイク一辺倒の時代で、FJのキャラクターは当時の国内のトレンドからは逸れていたものの、長距離をハイスピード巡行する文化が根付いているヨーロッパでは高評価を得て人気モデルとなりました。
FJ1100において最大のトピックは、なんといってもヤマハが“ツアラー路線”でFJを作ったこと。
今お伝えしたように当時の日本では「速いオートバイ」が最も流行っていて、大型クラスにおいても、スズキ『GSX1100Sカタナ』やカワサキ『GPz1100』、ホンダ『CB1100R』などはやはりスーパースポーツ路線のモデルでした。
そんななかヤマハは、(カタナやGPzと同じ空冷1,100ccのエンジンを使いながらも)唯一ツアラーの道を選んだのです。
これは、当時のトレンドに流されない、ヤマハの勇気ある決断だったといっていいかもしれませんね。
とはいえ、FJが遅いバイクだったのかというと、そんなことはありません。
完全新設計された空冷4バルブDOHCの並列4気筒エンジンは、最高出力125ps/最大トルク10.5kg-mを発揮。
これは、上で挙げたライバルの1100ccモデルを全て凌駕するスペックでした。
トップスピードも当時としては圧倒的な230km/h台をマークしており、FJは「ツアラーモデル」という表現のみで片付けることなど到底できないポテンシャルを秘めていたのです。
防風性重視のカウル、長距離巡行を意識したビッグサイズの燃料タンク(24.5ℓ)、ライダーが快適に跨がれるポジション設定などを見るに、やっぱりFJの根本はツアラーなのですが、その一方で実はどんなオートバイよりも鋭利な“キバ”を隠し持っており、FJはまろやかさも鋭さも併せ持った最強のツアラーだったといえるでしょう。