福井の皆様、股下1メートルのトラヴィスをよろしくお願いします!《阪神ファーム》
阪神タイガースのユニホームを着て5ヶ月、すっかりチームに馴染んだ佐村トラヴィス幹久投手(21)。みんなに様々なニックネームで呼ばれ(本当に様々な…。それはのちほど)可愛がられていますが、ここでしばらく鳴尾浜を離れることになりました。3月末から福井へ行っていた田面巧二郎投手(24)と入れ替わって、ミラクルエレファンツの一員となるためです。
阪神タイガースと、プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの福井ミラクルエレファンツを運営する(株)福井県民球団が選手派遣に関する業務提携を行ったのは、ことし3月10日。そこで選手2名(前期1名、後期1名)の派遣が決まりました。福井はNPBとの業務提携が2013年のオリックス、昨年のロッテに次いで3球団目。阪神から独立リーグへの選手派遣は初めてのことです。
田面投手が合流して迎えた4月12日の本拠地開幕戦(福井フェニックススタジアム)は、阪神ファームとの交流試合。新しいユニホームの田面投手も、後期に派遣されるトラヴィス投手も登板しました。この時の模様、田面投手の話などは、こちらからご覧いただけます。
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福井が球団初の前期優勝!
あれから、あっという間に2ヶ月半。6月28日付けで派遣期間が終了した田面投手は鳴尾浜に戻り、きのう30日から練習を始めました。そうそう、その28日に福井ミラクルエレファンツはADVANCE-Westの前期優勝を決めたんですよ!この日の試合は中止になった福井ですが、最後まで争っていた2位・信濃の敗戦により、球団発足8年目の初優勝が決定。9月18日から行われる地区チャンピオンシップへ進出します。
阪神のファーム監督時代、お世話になった吉竹春樹監督も「熱心に応援してくださったファンの皆様のおかげ」と感謝のコメント。ただし「まだ前期が終わったばかりなので、後期に向けて足りなかったところを点検し、選手たちをしっかり指導したい」と続きます。さらに気を引き締めてということでしょう。監督に就任してすぐの前期優勝、おめでとうございます。田面投手にとっても、いい経験になりましたね。
そして3日開幕の後期に備え、トラヴィス投手は29日に福井入りしています。この日の午前、鳴尾浜を出る際に「まだまだ実戦経験が少ないので、経験を積めることが楽しみです。帰ってきて、それを生かせるようにしたい。タイガースにも福井にも感謝です」と語ったそうです。その日に福井市内で行われた新入団会見では「打者1人1人としっかり勝負して、チームに貢献できるよう頑張りたい」と意気込みも。背番号を尋ねたら「20番に決まりました!」と嬉しそうです。
正式には7月1日からチームに合流するトラヴィス投手。でも、きのう6月30日は28日に中止となっていた前期最終戦が行われたため、ユニホームではなくハーフパンツで試合前の練習に参加したそうです。また、きょう1日は『福井を元気にする会』やスポンサーへの報告会を兼ねた食事会がありオフ。あす2日から練習で、3日には後期開幕を迎えます。
雪が降る中での実戦初登板
浦添商から2012年にドラフト6位で横浜DeNAに入団した佐村トラヴィス幹久投手(21)は、2013年から育成選手となり、2014年オフに戦力外。その年の合同トライアウトを経て育成選手で阪神に入団しました。彼と話をしたり、試合後のコメントを聞いていると、必ず「感謝」「経験」「勉強」「ケガ」という単語が出てきます。そんなトラヴィス投手の、ここまでの登板を振り返りましょう。
ゲーム初登板は3月11日の教育リーグ・ソフトバンク戦(鳴尾浜)。前日に続いて雪が舞う強烈な寒さの中、マウンドへ。1対1の7回、簡単に2死を取りながら宮崎選手に死球を与え、勧野選手の打球にファースト・一二三選手とセカンド・西田選手がお見合い…内野安打となってしまいました。これで2死一、三塁となって9番の張本選手に3ラン。次に四球を出しますが、最後に空振り三振を奪って終了。1イニングで20球を投げ、2安打1三振2四死球3失点という内容です。
この試合について後日、トラヴィス投手は「結果というよりは、しっかりバランスを重視して投げました。ほとんど真っすぐ、2アウトまで真っすぐで取ったんですが、ホームランを打たれたボールはカウント的にも配球を読んできていたと思います。来るとわかっていてもゴロに打ち取れるように、それを常に自分の感覚で投げられるようにしたいです」と振り返り「試合は悔しかったけど、いい経験だったと思う」と話していました。
「この時期に毎年ケガをしていた。寒い季節を乗り切れたのが大きい」とも言います。確かにDeNAのキャンプはファームも沖縄だし、トラヴィス選手も沖縄育ち。だから「安芸は寒かった!それに(3月11日の初登板も)雪の降る中で…初めての経験。初めてのことばかり」と目を丸くしていたのを思い出します。福井も寒いよ~と脅かしてしまったけど、行くのは夏ですよね。大丈夫。
公式戦4試合はすべて無失点
次の登板が4月12日のルートインBCリーグ・福井ミラクルエレファンツ戦(福井フェニスタ)。0対0の6回にマウンドへ上がり、空振り三振を取ったあと中越えのエンタイトルツーベースを浴びるも、4番と5番を打ち取って無失点でした。名刺代わりの登板だったのでしょうね。試合後もあちこち挨拶回りをしていて、この時は話を聞けずじまいです。
そして4月19日のウエスタン広島戦(鳴尾浜)で、移籍後初の公式戦登板。6対1とリードされた試合ではあったものの、9回裏に山本投手が1死を取ったあとマウンドへ。5番の鈴木将選手に対し108キロのカーブでストライク、次は140キロの真っすぐで二飛。続く美間選手は直球、変化球を交えカウント2-2として7球目、141キロの真っすぐで空振り三振!2人をしっかり抑えて戻ってきました。
久保投手コーチは「練習していることのバロメーターとしてゲームに出て、また練習の励みになればね。トラヴィスの、あの緩いボール(110キロ前後)はカーブです。すごい落差でしょう?“ナイヤガラ・フォール”ですわ。カーブ、フォーク、真っすぐでやっていきたい。真っすぐも140キロ後半が出ていたけど、肩を痛めていたことがあるので、今はゆっくりと。でも140キロ後半を出していた片鱗が少し見えた。次また使いたくなるね」という言葉。
トラヴィス投手は、9回1死からの登板に「3日間ゲームに入れてもらって、ブルペンでイニング間に投げたりしていましたが、いつ行くというようなことは聞いていなかった」と言います。カーブについては「高校でもDeNAでも、あまり投げていません。阪神に来てから本格的に。試合で使ったのは、きょうが初めてです!自分からというよりは岡崎さんがサインを出してくれたので。腕を振ることだけ意識していました」と、安心したような笑顔がこぼれます。
「真っすぐはちゃんと指にかかって放れました。最後は追い込んでから外の真っすぐがちょっと抜けたけど」。でも空振り三振ですもんね。相手もなかなか打ちづらそうでしたよ。この時は「真っすぐとフォークを練習して、福井でどんどん使っていければ」と言っていました。
阪神での初勝利と初先発
公式戦2試合目は、東大阪で行われた5月10日のオリックス戦です。15安打13失点で大敗したゲームの一番最後に登板して、2死から小田選手に二塁打(この日は強風で外野手の守備が乱れていました)されるも無失点。ただし本人は「逆ダマとか多かった」と反省です。ついで5月27日、3対3で引き分けたソフトバンク戦(鳴尾浜)で8回に登板して1安打1三振1四球、この日も無失点と順調にきています。
6月に入って遠征も続いたため、公式戦4試合目の登板は6月17日の中日戦(鳴尾浜)。2対0とリードされた8回に出て、1死から四球2つを与えたものの無失点で、その裏に打線が一挙6点を奪い逆転!そう、一二三選手の“人生初”満塁ホームランでトラヴィス投手に勝ちがついた試合です。「一二三さんのおかげ」と感謝しつつ「技術面がまだまだなので、福井に向けてしっかり練習していきます」というコメントでした。
そして6月24日、鳴尾浜にソフトバンク3軍を迎えての練習試合で今季初先発。3回を投げヒットは3本ながら5四死球(四球4、死球1)で2点を失っています。その時も「毎年ケガばっかりしていたので、こんなふうに先発もさせていただいて勉強になりました。いい経験です」と話していたトラヴィス投手。
ケガなく過ごせることに感謝
とにかく毎年、何かしら故障があったというトラヴィス投手。寒い時期は特に多かったとか。でも今年は大丈夫だと、キャンプを無事終えられた時に実感したそうです。以降も問題なく過ごしており「しっかりケアできています。オーバーワークにならないようにも。DeNAの時、オーバーワークがケガにつながったりしたこともあるので。でも今は投げて、すごく勉強できて、充実しています」と明るい表情。プロに入ってからも“成長痛”に苦しんだことがあったんですって。今はそれがないので楽みたいですよ。18歳、19歳でまだ伸び続けていたんでしょうねえ。
昨年は7月13日の試合中に右肩を痛めて『肩甲下筋(けんこうかきん)肉離れ』との診断を受け離脱。そのため昨シーズンの公式戦は1試合のみの登板でした。その点も考慮して「一度、肉離れをしていると固まりやすくなるということで、肩の柔軟性を出すような練習をしていた」とか。それで2月の安芸キャンプで、最初はブルペンで普通にピッチングをしていたのが少し変わったんですね。「はい。途中から基本の動作練習などをしていました」
慎重かつ念入りにトレーニングを重ねて無事に迎えたシーズン。タテジマに袖を通しながら、独立リーグに派遣されることになり戸惑っているだろうと思ったのですが「DeNA時代は、イースタン公式戦の登板が3年間で5試合だけ(2012年なし、2013年4試合、2014年1試合)だったんです。だから福井へも行かせていただけることは、すごくありがたい。いろんな場面で投げさせてもらえると思うので1試合1試合、準備を大切にしてベストの力を発揮したい」ととても前向きです。
さらに「キャンプをした四国も、福井も初めて。いろんな場所で野球ができて嬉しいです。初めての1人暮らしなので、野球だけでなく私生活でも勉強できる、いいチャンスだと感謝しています。福井から帰ってきたら、その経験を生かせるようにしたい」とも言っていました。きっと大きく、たくましくなって帰ってくる9月を楽しみに待っていますよ。
ニックネームは多種多様
ところで、最初にも書いた様々なニックネームですが、おそらくチーム一番の多さでしょう。試合中にも色んな呼び方をされています。ひとつずつ丁寧に教えてくれたので、そのうちの何種類かをご紹介します。
名前そのままの『さむら』『トラヴィス』『みきひさ』に始まり『トラ』『ミッキー』と、このあたりは順当ですね。ついで『みきお』『とらお』も想定内。
『ダルビッシュ』(ひねりも何もないですね)
『トラビッシュ』(ひねってはいるけど…)
『ビッシュ』(短縮形。最近これ多いかも)
『さむらごうち』(あると思いました)
『トラベル』(なんで?笑)
『ネスミス』(歌って踊れる?)
『ボルト』(長距離も速いですよ)
『ダーウィン』(もと阪神の?)
最後に『ブリビス』。これは安芸キャンプ初日のセレモニーで、安芸商工会議所から贈られたブリを古屋監督が受け取り、それをトラヴィス選手が預かったということで誰かが言い出したそうです。実はこの時、皮手袋をしたままだったトラヴィス投手。気づいて外したものの既に遅く「めっちゃブリの匂いが…」と苦笑いしていました。
その後も新たなニックネームは出てきているみたいですよ。トラヴィス投手自身は、特にお気に入りや希望するものはないと言いますが、この前はチームメイトに誰かの名前で呼ばれ「○○じゃないって!」と素早く切り返していました。なかなか頼もしい。そこで、さらに「はい、○○です。って違うがな!」というノリツッコミもできれば鬼に金棒です。
と思っていたら!習っていました。いや、教えこまれていたというべきか。玉置投手や今成選手から仕込まれたネタは
「トラヴィス、ことしの目標は?」
「えーと9秒…。ってボルトじゃないから!」
ってな感じです。他にもありましたよ。とにかく、このノリツッコミを福井でも駆使して、みんなに可愛がってもらってくださいね。
藤野さん、トラヴィスもよろしく!
可愛がってもらうといえば、4月の取材でも大変お世話になった福井ミラクルエレファンツの藤野剛志投手がいます。田面投手は藤野投手のおかげで、あっという間に溶け込めたと言っていいくらい。お互いチームの中ではニューフェイスだったんですけどね。その藤野投手に少し話を伺いました。まずは前期優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます!きょう(30日)の前期最終戦も、しっかり勝利で終わることが出来ました!こうじろうにお伝えください」。そうですね。田面投手は28日が期限だったので、最終戦はもう帰ってきてしまっていたんですね。でも優勝決定は一緒に祝えたわけで、いや~30日までもつれなくて何よりでした。
引き続き、トラヴィス投手もよろしくお願いしますと言ったら「ミキヒサ!すごい真面目ですね!これからがまた楽しみです。後期もお待ちしてます!」と藤野投手。ほほ~既に“真面目”は伝わっていますか。って第一印象でわかりますわね(笑)。後期も一度、観戦に行かねば。最後に藤野投手は「もう1回、吉竹監督を胴上げできるように、ミキヒサともども頑張ります!」と締めくくってくれました。いつもながら至れり尽くせりのコメント、ありがとうございます。
最後に、タイトルの『股下1メートル』の件。春季教育リーグが行われている頃、並んで取材をしていて「トラちゃん、足長いねえ!」という話になりました。私の肩くらいまで…は大げさですが、ほんとに長い。で、聞いてみたわけです。股下何センチ?と。答えは「100センチ」。100センチって1メートルやん!と、びっくり仰天でした。ちなみに身長が191センチです。これなら短距離も長距離も速いはず。その速さに関しては、こちらの記事にも書いています。<タイガース・安芸キャンプ トラヴィス投手の脚 & こぼれ話>