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スタジオジブリ『On Your Mark』が教えてくれるカウンター席の温かさ

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:京料理、和食をリード(日本経済新聞)

親しい人、もっと親しくなりたい人と食事に行くとき、和食店や居酒屋のカウンター席を予約することが多い。テーブル席で向かい合って見つめ合うとお互いが主役になってしまうけれど、カウンター席では主役はあくまで料理と酒。僕たちは脇役というか観客に過ぎない。それが心地良いのだ。

まずはビールなどの飲み物を注文し、出てくる間に一緒に料理のメニューを見る。どれもおいしそうだ。それぞれが食べたいものを2つずつぐらい挙げて、偏りすぎていないかを話し合い、出てくる料理はシェアをする。

最初に頼んだ料理を3分の2ぐらい食べ終えて、ビールに飽きてくると、日本酒や焼酎に切り替える。料理も塩辛や燻製などのつまみ系を追加で注文する。すでにおなか一杯になっているので、締めの炭水化物やデザートは必要ではない。

飲食を楽しみながら、のんびりと話す。初対面や久しぶりの再会で雰囲気がぎこちないときは無理に話さなくてもいい。向かい合っていないのでぎこちなくはならない。愛情のこもった料理や酒を褒めながら酔いが回ってくると、一緒に盛り上がれる話題が見つかることが多く、言葉がかみ合い始める。うれしくなって、相手の腕や肩をちょっと触ったりすることもカウンター席ならできる。肩ひじを張っているとなかなか言えなかった本音や弱音をこぼせることもある。

スタジオジブリの短編映画『On Your Mark』は、放射能に汚染された未来世界を描いた秀作だ。高層建築や乗り物はすべて『スターウォーズ』並みにハイテクなのに、悩みを抱えた主人公が親友と向かうのは現代と変わらない居酒屋。二人はカウンター席に座っている。酒を飲みながら深刻な表情で前を見つめる主人公。「オレも一緒にやるから心配するな」という表情で塩辛を平気で食べる親友。人間的でいるための場所はいつの時代もあまり変わらないのだと示唆している。

日経新聞の京都経済特集によると、来月上旬には「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録される見込みらしい。記事では、革新性を受け継いできた京料理や一汁三菜を基本とする家庭料理に注目していた。僕はそれらに加えて、居酒屋や小料理屋のカウンター席で静かにゆっくり酒を飲みかわすことも世界に誇りたい。本当のコミュニケーションは、向かい合うのではなく隣り合って同じ方向を見ながら生まれるのではないだろうか。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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