PTAや育成会の退会で起きる「登校班はずし」――名簿を無断提供する学校の責任は大きい
ここ数年、「親がPTAをやめたら子どもが登校班からはずされた」というトラブルが増えていることはお伝えしてきましたが(参考1・2)、育成会などPTA以外の社会教育団体が登校班を編成しており、退会時に同様のトラブルとなるケースも最近割合耳にします。
- 参考1/PTAやめた代償は「登校班はずし」 子どもを巻き込む理不尽な現実 (1/2) 〈AERA
- 参考2/非会員家庭の子は登校班に入れません、コサージュをあげません――PTAの対応は何が間違っているのか
たとえば都内に住む保護者Aさんは、子ども会を抜けたところ、「登校班を抜けることに同意する」と書かれた退会届にサインさせられたといいます。
埼玉県に住む保護者Bさんも、育成会を退会したら、子どもが登校班からはずされました。当初は学校が単独登校を認めず、Bさんが車で送っていましたが、最近ようやく子どもを一人で通わせられるように。しかし目立つため、他の子にからかわれたことも。
親が任意加入団体をやめるのに、なぜ子どもが登校班はずしという制裁を受けなければならないのか? 退会者が抗議しても、PTAや育成会に聞き入れてもらえず、校長先生が介入して、ようやく登校班に戻れるケースもよくあります。
ただしなかには、校長先生や教育委員会に相談をしても、「登校班は保護者や地域が勝手にやっていることだから」「他団体(PTA、育成会)のことだから」などと言われ、放置されるケースもときどき聞きます。
しかし、登校班は決して保護者が勝手にやっていることとは言えないはずです。学校や教育委員会にも、大いに責任があります。
なぜなら、登校班がある学校ではほとんどの場合、2~3月頃、新年度からの登校班編成をしてもらうために、新入生保護者の個人情報を、本人の承諾を得ないままPTAや育成会に渡しているからです。
筆者はこれまでに何度も、PTAや育成会の役員をする保護者から、「学校から新入生の名簿をもらってしまった」という話を聞いていますし、校長先生本人による「渡しています」という証言も聞いたことがあります。
公立の小中学校が、PTAや育成会といった他団体に対し、保有する個人情報を本人同意なく提供したら、各自治体の個人情報保護条例に違反するはずです。
自治体によって文章は異なりますが、個人情報保護条例には、「実施機関は特別な場合以外、もっている個人情報を目的外利用したり、他団体に無断提供したりしてはいけない」といった内容が書かれているはずです(登校班編成はもちろん、“特別な場合”には当たらないでしょう)。
つまり逆に考えると、学校が保護者の個人情報を正しく扱っていないから、PTAや育成会への全員自動入会が可能となっており、そのために「登校班はずし」のような退会トラブルが起きている、ともいえるのです。
学校は条例に従って個人情報の扱いを正しく改める(保護者の同意なく他団体に情報提供しない)のと同時に、加入意思をきちんと確認し、また「登校班はずし」等のトラブルが起きた際は、「関係ない」などと言わず、しっかり介入してほしいと思います。(*2)
- *1 全国的にみれば登校班がない地域や学校のほうが多く、また登校班があってもトラブルなく退会できるケースは多いのですが、最近は退会者が増えてきたことで、比例してトラブルとなるケースも増えています
- *2 学校が保護者の同意を取らずに個人情報を提供してきた場合、受け取るPTAや育成会の側も、個人情報保護「法」に違反します(こちらは条例でなく、法律の対象。2017年5月から改正個人情報保護法が施行され、保有する個人情報が5000件以下の事業者も、適用対象となっている)。個人情報保護法第26条には、事業者(この場合PTAや育成会)が第三者(同・学校)から個人データの提供を受ける際は、どのように取得されたものかを確認・記録する義務が定められています。ですから、もし学校が保護者の同意を取らずに渡してきた個人情報であれば、PTAや育成会はそのことを把握するはずで、受け取れないことになるのです。もしそれを受け取れば、個人情報保護法第17条(不正の手段で個人情報を取得してはならない)に違反することになります。