Yahoo!ニュース

新型コロナで前年比男性0.06年・女性0.04年伸長…どの死因が平均寿命に影響したか(2024年版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
医療技術の進歩で平均寿命は延びつつある。どの死因で延びたのか(写真:イメージマート)

厚生労働省から2024年7月に発表された2023年分の簡易生命表には、主要な死因が寿命に与えた影響を示す「平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数」が掲載されている。この内容を確認する。

まず「死因別寄与年数」の言葉そのものだが、これは「該当死因を除去した場合、平均余命がどれだけ延びるか」を意味する。ゼロ歳を対象とした場合は、そのまま平均寿命の延びとなる。例えば2023年における男性・ゼロ歳における、死因としての悪性新生物を除去した場合、平均余命(寿命)は3.16年延びるとある。

そして今回確認する値・グラフは、その「死因別寄与年数」の2023年における前年比。2011年には東日本大震災が発生し、その影響が大きく2011年・2012年分のデータには生じていたが、それも2013年にはほぼ消えており、日本の平均寿命・死因状況は震災以前の状態に戻りつつある。それが別の切り口から分かるのが、次に示す図。

参考までに震災の影響を確認できる2012年分も併せて掲載する(本当は震災当年である2011年のものが一番よいのだが、当年の簡易生命表では数字による死因別寄与年数の全体的な前年比の公開は行われていない。なお2011年における地震を起因とした平均寿命の寄与年数は、男性でマイナス0.26年、女性で0.34年となっている)。ちなみに両グラフでは縦軸の区分が異なる点に注意してほしい。

↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2023年)
↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2023年)

↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2012年)
↑ 平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数(男女別、年)(2012年)

グラフ項目中「交通事故」「熱中症」「地震」は「不慮の事故」に内包されたもの。そして「悪性新生物・心疾患・脳血管疾患」(いわゆる三大生活習慣病)は個々の項目をすべて同時に除去したものである。また2023年のデータでは2012年と比べて「地震」「熱中症」項目などが削除され、「新型コロナウイルス感染症」「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)および解離」(大動脈が大きく膨らんだ状態になるのが大動脈瘤、大動脈の血管の内壁に亀裂が入って剥離状態となるのが大動脈解離)などが入っている。

この項目の変化は、2023年では地震による平均寿命への影響は、ほとんどゼロと認識してよいほどの状態になったことを意味する。2012年では寄与年数が、大きくプラスに振れていた状況からは大きな変化である(2012年が前年比で大きくプラスに振れたのは、その前年に当たる2011年で地震による不慮の事故者が多発し、結果として平均寿命を押し下げた反動によるもの)。また2012年、さらには今回掲載はしていないものの2013年時点では「熱中症」が存在していたが、2014年以降は消えており、少なくとも2014年以降においては熱中症による死亡者が、平均寿命に影響を及ぼすほどの数は発生しなかったことが分かる(記録的な猛暑となり「命の危険」が連呼された2018年でおいてですら、である)。

具体的項目では、2023年においては「老衰」「その他」が大きなマイナス値を示している。これは2022年と比べて「老衰」「その他」を死因とする人が増えていることを意味する。「その他」の具体的な説明および動向に関する解説は無いが、列挙されている主要な死因以外の多様な原因で亡くなるケースが増えており、それを合算すると大きな数字になると解釈すればよいのだろうか。「老衰」(厚生労働省発行「最新版の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」には「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います」と説明されている)も同時にマイナス値を示してることから、その推測は的外れのものでもなさそうだ。

三大生活習慣病による平均寿命はプラス(つまり平均寿命を延ばす)方向にあり、状況は改善されていることも確認できる。

昨今一部で報じられることによって話題となった「自殺」だが、男性はマイナス0.00、女性もマイナス0.00(資料では小数第二位までの表記)。少なくとも平均寿命の観点では、男女ともにわずかだが自殺に関するマイナスの影響が生じている、つまり平均寿命を引き下げる動きを示していることが確認できる。

資料では小数第二位までの有意値が数字として記されているが、それ以下のマイナス値を示している印として、男性では「肺炎」「交通事故」「自殺」、女性では「肺炎」「自殺」が確認できる。ほんのわずかではあるが、これらの項目で寿命を縮める、状況が悪化する動きが見られたことになる。数字の上ではわずかには違いないものの、色々と気になる動きではある。

■関連記事:

【何歳から高齢者? 中堅層以上は「70歳ぐらい」】

【平均健康寿命の国際比較(最新)】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事