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400万円近くを集めてクラファン大成功のアゲアゲさん 編入試験を前に「詰むや詰まざるや」に取り組む

松本博文将棋ライター
終盤も鋭い折田さん、いま改めて難解詰将棋に取り組む(写真撮影:筆者)

 アゲアゲさんこと、折田翔吾さんのクラウドファンディングが大変な盛り上がりを見せています。

【前記事】

折田翔吾さん、将棋のプロ編入試験受験料をクラウドファンディングで募り、すぐに250万円以上集まる

 プロ編入試験五番勝負の受験料54万円(諸経費などを含めて目標額89万円)を広く募ろうという試みは、開始から1日が経ちました。そしてなんと、目標額をはるかに上回る、400万円近い額が集まっています。10月17日20時の時点では、385万2343円でした。

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 折田さんに電話で取材したところ、折田さん自身も、これほどのお金が集まるとは予想していなかったそうです。受験料、リターン、諸経費をまかない、さらに受験にかかる諸費用を見込んでも、十分以上の額です。折田さんは400人以上のパトロンの皆さんに感謝するとともに、

「超えた額の使い道については、合格のためにプラスになるような使い方をしっかり考えたいと思います」

 と語っていました。直筆色紙や直筆扇子がもらえるコースなど、すでに定員を達成して募集が終わっているコースもありますが、その追加募集はおこなわないそうです。

 折田さんは先日、『将棋世界』誌の企画で瀬川晶司六段、今泉健司四段と対談しています。その際、折田さんは両者に質問をしていました。その動画がアップされています。

「プロになってから1番嬉しかったこと」という質問に今泉四段は、ファンからの応援の言葉がもらえることを挙げています。瀬川六段も同様のようです。

 折田さんは人気YouTuberとして既に多くの人から声援を受けてきました。その上でクラウドファンディングの大成功は、折田さんにさらなる大きな力を与えることでしょう。

 しかしながら、編入試験の場で戦うのは、やはり折田さん一人です。折田さんが将棋盤の前に座るまでは、ファンは折田さんを助けることができます。将棋盤の前では、折田さんはもう、誰の助けも借りることはできません。

 折田さんは現在、プロ編入試験について準備中です。将棋ソフトでの研究など、最新のツールも使いこなす折田さんですが、一方で、江戸時代の詰将棋集、通称「詰むや詰まざるや」にも取り組んでいます。

 江戸時代の三代伊藤宗看(7世名人)は『将棋無双』、伊藤看寿(贈名人)は『将棋図巧』と呼ばれる、難解にして華麗な詰将棋集を遺しました。それぞれ100問。合わせて200問。ほとんどが数十手の中編で、中には詰むまでに611手という長編もあります。

 棋士を志す人たちであれば、それらの複雑極まりない詰将棋も、頭の中で正確に読んで解きます。それが読むトレーニングになります。芸術作品ともいうべき古典に、そしてアナログの極みともいうべき上達法に、折田さんはなぜいま取り組むのでしょうか。

「これを全部解いたら、四段に上がれると言われていますので。やっぱり難しいですね。(かつて所属して三段までいった)奨励会の時には、全部解けませんでした」

 折田さんはそう語っています。「詰むや詰まざるや」を全部解ければ四段(棋士)になれる、というのは、米長邦雄永世棋聖(故人)の有名な言葉です。

 200問中、残すはあと十数問。編入試験五番勝負が始まるまでに、はたして解けているでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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