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フットサル界で鈴木隆二とU-20日本代表が成し遂げたことと、その意義。

森田泰史スポーツライター
ブルーノ監督と鈴木コーチ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

今年3月、『フットサルプラネット』が2019年の各賞のノミネートと受賞者を発表した。そのなかで、「ベストナショナルチーム」にU-20フットサル日本代表が、「ベストナショナルコーチ」に鈴木隆二監督(現A代表コーチ)がノミネートされた。

ポータルサイト『フットサルプラネット』は20年の歴史を誇り、各国記者・識者らの投票によって、「ベストナショナルチーム」「ベストナショナルコーチ」「ベストクラブ」「ベストクラブコーチ」「ベストプレーヤー」「ベストGK」「ベストヤングプレーヤー」「女子ベストプレーヤー」「女子ベストGK」「ベストレフェリー」を毎年選定している。

いわば、フットサル界のバロンドールである。

2014年に、日本代表と、ミゲル・ロドリゴ当時監督がノミネートされた過去がある。得票数471ポイントを獲得したミゲル・ロドリゴ監督は、ロベルト・メニケッリ(イタリア/得票数632ポイント)に次いで、2位だった。

2018年には、日本代表と、ブルーノ・ガルシア現日本代表監督がノミネートされた。得票数320ポイントを獲得したブルーノ監督は、ホルヘ・ゴメス(ポルトガル/得票数522ポイント)、セルゲイ・スコロビッチ(ロシア/得票数344ポイント)に次いで、3位だった。

■日本人初ノミネート

今年も代表監督部門として10名の監督がノミネートされた。各国のA代表監督がずらりと並ぶ。

その中に、日本人監督として、初ノミネートである。

鈴木監督はスペインで指導者キャリアをスタートさせた。当時、バルセロナのマルトレイで現役選手としてプレーしながら、アレビン(U-11世代)のチームで第一監督を務める機会を得た。現カタルーニャサッカー協会フットサルカタルーニャリーグのホセ・ミゲル・カジェ会長が、鈴木にチャンスを与えたのだ。

指導者として着実に力をつけていた鈴木に、U11カタルーニャ州選抜とU13カタルーニャ州選抜の第2監督やマルトレイのトップチーム監督のオファーが届く。

マルトレイの育成年代監督としてリーグ制覇を2回達成し、準優勝を2回経験した。マルトレイの育成年代コーディネーターを務めたシーズンは、2チームがリーグ優勝、1チームを準優勝させ計3チームを昇格させている。マルトレイのトップチーム監督としては、目的だった2部Bリーグ残留を2シーズン連続で果たしている。

■選手の声

今回の受賞にあたり、昨年6月にイランで行われたAFC U-20フットサル選手権の優勝が重要だったのは、疑いの余地がない。

「本大会に行く前に、東アジアの予選だったり、台北の大会でやっていたので、本番でもそこの経験が生かされて、スムーズに入れました。それでも、本番は雰囲気だったり、相手だったり、違うところはありました」と語るのは、その大会に参加しピヴォとしてタイトル獲得に貢献した大塚尋人だ。彼はサッカープロパーの選手でありながら、フットサルU20日本代表に選ばれた選手である。

「結構、対戦相手のなかには体が強い選手もいたのですが、自分なりに工夫すれば負けないということも試合をする中で分かってきて。ただ、そんなにスピードがなさそうに見えて、ドリブルの緩急だったり、海外の選手はリズムが違うというか、そういうところは難しかったです」

そんな大塚に、鈴木の印象を聞いたところ、「時々、(指示が)難しいところもあるんですけど、自分のことを考えてくれてるなと感じます。サッカー用語とか、サッカーで使うような言葉を使ってくれたり、ボードを使ったり、自分も少しずつ覚えていったんですけど、『こういう動きをすればいいんじゃないか』と言ってくれたり、隆二さん自身もサッカーをやって(フットサルに移ったので)、自分の気持ちも分かってくれていると思っていました。本当に分かりやすく、やらせてもらいました」という答えが返ってきた。

また、大塚と同じくピヴォの選手としてチームに欠かせない存在だった本石猛裕は、こう振り返る。

「イランでは、移動で疲れて、自分はあんまり気候に慣れなくて、乾燥していたりして苦しんだんですけど、大会に入る前くらいに調子が上がってきて。大会としては、自分は何か活躍したわけではないですけれども、一番思ったことは、チームの団結力ですね。チームが一つになった時に、なにか、ひっくり返せるかなと思いました」

悲願の初優勝を果たした大会で、キーワードは『団結』と『信頼』だったのかもしれない。本石は語る。

「大会に入る前から、ずっと一緒に、一年ちょっとやってきていたので、お互いが信頼していました。自分たちはスタッフ陣をめちゃくちゃ信頼していたし、監督やコーチたちも、自分たちを信頼してピッチに出してくれたので。そのあたりの信頼関係というのは、かなり強いものがあったと思います」

「チャイニーズ・タイペイの大会(昨年4月に行われた国際親善大会の2019 CTFA U20 Futsal Invitation)で、イランに負けて。結果的には勝ち点で上回り優勝したんですけど、あれが悔しかった。次の、もう1回チャンスがあるから、そこでイランに勝って、隆二さんを胴上げしようと、(選手間で)言っていました。それが一番の原動力でした」

決勝でアフガニスタンを破り、アジアの頂点に立った。二度、三度、鈴木が宙を舞った。そして、今回、『フットサルプラネット』の選出で鈴木とU-20フットサル代表がノミネートされた。褒賞は届いた。彼と、彼らの、次なるチャレンジはーー。期待が、高まる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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